無法地帯の街
ワグマ曰く、しばらくは方針を決めずに好き勝手行動していいようだった。
ということなので、私は気になっていた場所にでも行こうと思う。というのも、この王国でも治安が悪いところはもちろんあり、無法地帯の街と呼ばれるアンウン街という街があるようだった。
無法地帯では暴力沙汰や盗難はもちろんあるという。そこではいくら人をキルしてもカルマ値がたまらないのだという。そこでなら思い切り喧嘩できそうだ。
私は早速行こうとすると。
「ちょっと待ってくれるかな。僕もゼーレと一緒に行くよ」
「俺も……」
「ついてくんの?」
「ついてきてほしくないならいかない」
「いや、別についてきてもいいけどろくでもねえところだぞ?」
「ろくでもないとこ?」
私は早速行くことにした。
カイゼルを呼び出し、カイゼルにまたがる。カイゼルは二人を乗せないが、しがみつく形でならということでカイゼルに乗せることができた。
ロープを垂らし、それにそりを結び付け、カイゼルは二人を乗せて飛び上がる。
そして、目的の街が見えてきたのだった。
街は荒廃しきってはいるものの、人はいるようだった。道端で倒れている人、殺されている人もいるようだ。
「うへぇ……」
「なんだここ。ディストピアか?」
「だからろくでもないとこつったろ。無法地帯アンウン。ここは王国でも一切の手出しができていないろくでもねえ場所だ」
「なんでこんなとこに……」
「そりゃ……」
私たちが話していると、目の前に男の人がナイフを持って立っていた。
襲い掛かってくる。私は男の腕をつかみ、思い切り腹部に膝蹴り。男はぐふっと情けない声を出し、その場に倒れたのだった。
「ここではいかなる暴力沙汰も許されるからな。喧嘩の鬱憤を晴らしに来た」
「……喧嘩一筋だね」
「すげえな、ここまでくると」
喧嘩し放題ってのは私としてはありがたいもんだ。
阿久津家というしがらみでは喧嘩なんてろくにできたもんじゃねえし、PKなんてのはもってのほかだしな。
ここは治安が悪いからこそ、喧嘩し放題というわけだ。
「さて、いくぞ。この街にはこの街にしかない武器とかもあるそうだ」
「弓矢とかあるの?」
「ああ。強い武器があるそうだ」
そういうと、少しキラキラとした目になっていた。
武器やのほうに行く。武器屋の店長も、やる気なさげにしていた。おいてある品には頑丈な南京錠などがかけられ盗まれないようにされている。
「なぁ、これくれ」
「あいよ。金はあるんだろうな?」
「まぁ、額面通りならある」
「額面通り? いいぜ」
と、少しニヤついていた。
私は首根っこをつかむ。店主は苦しそうにもがいていた。
「なにしてるんだ!」
「あの槍多分粗悪品だろ? それを額面通りってぼったくりもいいところじゃねえの?」
「根拠は?」
「ねえよ? ただ、やりそうなことだろ。この街なら」
きっとこの店頭に陳列しているものの大体が粗悪品だろう。
なんとなくそう思ってはいたが、店主の態度から察するに確信できた。
「がっ……息がっ……」
「このまま殺されたくなかったら粗悪品じゃねえ普通のを出すしかねえよ? 私の目は誤魔化せねえからな」
私は店主を解放すると、店の奥から槍と弓を持ってきた。
飾られているものとはちがい、傷もなにもないようだ。私は持ってみて、地面に槍をぶっ刺してみても壊れない。本物だな。
「よし、ホンモノ」
「えーと、いくらだ?」
「5万……」
「あ?」
私は店主を睨みつける。
「ぼったくろうとしておいてその金額はねえんじゃねえの? 額面通りってわけにはいかねえよな」
「に、2万ブロンでいい!」
「オーケー。弓矢も同じ値段でいいだろ?」
「はい!」
武器を無事購入することができた。