修学旅行・終了
長かった修学旅行も終わりを迎える。
私たちは駅の構内にいた。
「やー、北海道名残惜しいなー」
「いろいろ事件に巻き込まれたからすっげえ印象強いな」
「巻き込まれてたの主に市ノ瀬さんだけど……」
「疫病神ですから」
誰が疫病神だ。
だがしかし、修学旅行。ろくな思い出がない。喧嘩から始まって、強盗団に盗撮魔、誘拐犯と一日一犯罪に出くわしてる。人生、こうも不幸が続くのは私の人生の業が高いからだろうか。
「最後に皆さんで記念写真を撮りましょう」
「ということだ。一か所に集まれお前ら」
というので、記念撮影をすることになった。
私はいつものように端っこで壁にもたれかかる。写真はそこまで好きじゃない。そもそも昔はああだったとか振り返るのが嫌いなタチなもんで、写真という記録するもの大体好きじゃない。
大事なのは今と未来だけだからな。
「おら市ノ瀬、笑え」
「笑えっつったって……」
「花音は基本的に笑わないですよ」
「市ノ瀬さんずっと不機嫌な顔の理由って笑わないから?」
「笑わない猫……」
誰が猫だ。
校長がぱしゃりとカメラのシャッターを押した。新幹線が発射する時間ももうそろそろで、私たちも新幹線に乗り込んだのだった。
指定席で、私たちは指定された席に座ろうとすると、ぶっさいくなおっさんが私の指定席に座っていた。
「……はぁ」
「花音ってつくづく不運ですねぇ」
「笑い事じゃねえよ。面倒ごとになる予感しかしねえ……。しゃあねえ、駅員呼んで来い」
面倒ごとになる前に対処しないとな……。
月能が駅員を呼びに行く。その間に私はおっさんに話しかける。
「あの、そこ私の指定席なんすけど」
「あ? 指定だぁ?」
「素直に避けてもらえると嬉しいっす。これ、ここの番号っしょ」
「ああ、そう……。あ、すまん。番号間違えた」
と、男は立ち上がる。
男のチケットには06と書かれており、逆に見ていたようで90とみていたようだ。なんだ、面倒ごとにならなくてよかった。
「はは、すいません。ドジなもので……」
「いえ」
と、すんなり男は席を移動していった。
少し生温かみがあるがしょうがねえ。私はどかっと座ると月能が駅員を連れてきた。
「あれ、解決したんですか?」
「ああ。話が通じる相手だった」
「そうですか。では、修学旅行の帰り道、お楽しみください」
「う……ん?」
私は座席の下に何かが鳴っている。電話だろうか。
取り出してみると携帯があり、画面には妻と書かれた文字が。さっきの男の人のだろうか。
「すいません。06番に座っている男の人にこれを届けていただけないでしょうか」
「わかりました」
駅員が携帯電話をもっていってしまった。
月能が私の隣に座る。
「なにも最後までは悪いことは起きないんですか。つまんないですね」
「不幸が起きることを望むんじゃねえよ……。私だってあいたくないっての」
「ま、でも、波乱があったおかげで楽しめたじゃないですか」
「そうだな……」
私はアイマスクをつける。
「早くゲームがしてえ」
「帰ったらすぐにログインしましょうか」