修学旅行・函館編 ②
旅館の一室。
四隅には盛り塩がなされ、床には魔法陣が描かれた絨毯が。この魔法陣の中から出てはならないらしい。
ポルターガイストが起きるはずだからそれをまずは対処して、本体が現れるはずだという。本体はものすごくきもい幽霊の集合体でそいつを倒せば除霊はできるということだ。
私は身構えていると、突然置いてあったパイプ椅子が飛んできた。
「その程度か?」
私はパイプ椅子をつかむ。
そして、背後から飛んできた机にパイプ椅子で思い切りぶん殴る。
「オラオラ! 本体も出さねえで喧嘩とかビビってんじゃねえよ! めんどくせえから本体現れろや!」
私がそう挑発すると、突然目の前に八尺様のような長身でロング髪の女が現れた。
目の位置が口の位置にあったり、手に口があったりで少しおぞましい見た目をしている。私はその女につかみかかり、髪をつかみ地面にたたきつける。
「ぼ?」
「喧嘩すんだろ? おら、さっさとや」
「ぼおおおおおおおお!」
と、その八尺様みたいなのは壁をすり抜けて逃げて行った。
意外と根性内やつめ。私は逃げたと大声をあげて伝えるとおばあさんたちが中に入ってくる。嘘だろと驚いていたが、たしかにいなくなっとると言っていた。
「よく倒せたのぅ……」
「なんか叫んで逃げてったぞ?」
「幽霊って基本ビビらせたら勝ちですから」
「あー、花音は基本的にビビりませんもんね」
「むしろビビらせる側な」
見た目は確かにきもかったな。
「見た目はどうじゃった?」
「あー、口の位置に目があって……手に口があって……」
「見た目でまずビビらせて漬け込むつもりだったのかな……。相手したのが悪かったというかなんというか。とりあえず悪霊のほうは終わりです」
……なんていった。
「悪霊のほうは?」
「生霊もいるって……」
「はい。そちらは……その、恨まれてる人たちに誠心誠意謝るほかないですが……」
なるほど……。生霊までは払えないのか。
となると、こういうことが何回かはありそうだ。身構えておいたほうがいいかもしれないな。またこういう悪霊と対峙するときがあるかもしれない。
悪霊との喧嘩はあっけなく終わったし、歳とると勝てなくなるかもしれねえから早いとこ蹴りつけてえんだが。
「あ、あれ? 生霊も消えてく……?」
「先ほどの戦いを見て勝てないと悟ったんじゃろな」
「そういうことあるんですか!? どんだけ強い……」
「幽霊の髪の毛つかんで、たたきつけただけだぜ? ビビりだな幽霊も」
「こいつ本当に人間か? 鬼かなんかの間違いじゃないんか?」
「残念ながら人間です」
なんだよ残念ながらって。




