修学旅行・函館編 ①
函館まではバスで向かうようだった。
あっちには午後までには着く予定で、バスの中では小樽の思い出だったり語り合っている人ばかり。
そんな中、月能はどこかに電話をかけていた。
口ぶりからしても会社や茂治さんでもないようだ。お願いしますということは会社の取引先ということか?
月能は電話を切り、溜息を吐く。
「どこにかけてたんだよ」
「函館にいる腕の立つという噂の霊媒師です」
「霊媒師ィ? なんで?」
「あなたのお祓いのためですよ……」
とあきれ顔で言っていた。
「え、マジで行くの?」
「この半年間で何回死にかける出来事があるんですか? 一度マジで行ってみましょう。本当に呪われてるかもしれません」
というので、私は午後のお昼時間にお祓いを受けることになったのだった。
三時間程度で函館の旅館についた。お昼は各自で食べることといわれたので、とりあえずうちの班の男性陣に私たちにコンビニでいいから弁当を買って来いという指示だが出され、私はその霊媒師がいるという部屋に入る。
「ど、どう……うひょおおおおおお!?」
と、中に入るといたのは私たちと同年代くらいの若い女の子だった。
黒ぶち眼鏡をかけて、おとなしそうな女の子が巫女服を着て待機していた。が、私を見るや否やものすごく叫び声をあげた。
「おい、なに叫んで……」
「こ、こな……」
「ああ?」
「落ち着きなさい、美穂」
「お、おばあさま! も、ものすごい方がっ!」
「ああ、初めてじゃ。こんな大量の悪霊と生霊に憑かれているおなごは……」
と、優しそうなおばあさんまでもが私を見て驚いている。
「こんにちは。先ほど電話した阿久津ですが」
「阿久津さんよ、こんなバケモンを私らに相手しろというのかっ!?」
「そんなにひどいんですか?」
「おぬし、捕まってないだけで大量殺人鬼みたいに恨まれておるぞ!?」
そうなの?
「とりあえず、落ち着いて話しましょう。私は阿久津 月能といいます。こちらは市ノ瀬 花音」
「私たちは霊媒一家の桐ケ谷 美穂と、おばあちゃんの琴乃です……。その、あなたはどこまで恨まれて……なぜそんなに恨まれて……」
「あー? ああ、まぁ、喧嘩でたくさんぶちのめしてきたやつらからか? 恨みならたくさん買ってるんだけどよ」
「それです! たぶん、喧嘩で倒した相手の生霊と……その生霊に魅せられた悪霊があなたにたくさんとり憑いて……! 私たちじゃ手に負えません!」
「今年、何度も死にかけなかったか?」
「あー、拳銃で目を撃たれたり、車にはねられたり、蕎麦アレルギーでぶっ倒れたり、強盗団に出くわしたりしたな」
「よくそれで命が無事で……」
タフなのが取り柄だしな。
だがしかし、そこまでひどいものが私についているのだろうか。
「たぶん、出歩いたら死にかけることがたくさんあります! 悪霊たちがあなたをこちらの世界へ引きずり込もうと画策してるようですが……」
「うまくいってないのか、不満げな……」
「むしろ悪霊たちもなんで死なないんだって驚いてますが……」
「はっはっは。とり憑く相手を間違えたな。私は死なねえよそれぐらいじゃ」
だから離れてくれない? さすがに死ななくてもそういうの起きたら疲れるんだよ。
「で、お祓いはできんの?」
「無理です! 億積まれてもぜっっったいに、絶対に絶対に絶対に! ぜー-----っったいに無理です!」
「そこまでか……」
「いや、方法がなくはないのじゃが……」
「あるっちゃあるんすね」
「おぬし、戦うのは得意かね?」
「バリバリ得意っす」
むしろ戦いしか得意じゃねえ。
「降霊術を行って……幽霊と戦うしかないのぅ……。最悪、幽霊に憑かれ殺されるが……」
「その程度でいいんすか? じゃ、やりますよ」
現実で幽霊と喧嘩できるなんていいじゃねえか。
また一つ伝説を作ってやるよ。未来の人間にだって大うけする人間になってやるぜ。
「ならば準備せんとな。降霊術の最中は誰も入ってはならぬぞ。おぬし一人でやるのじゃ」
「おっけー。燃えてきた」
喧嘩の開始じゃ。
若干ファンタジー。力技で解決するのが花音