修学旅行・小樽編 ⑤
小樽修学旅行二日目。
今日は小樽で、明日の朝に函館に向かい、昼から函館で自由時間を過ごす。
私たちは日本銀行旧小樽支店の金融資料館という場所にクラスの全員でやってきていた。修学旅行のオリエンテーションでお金について学ぼうということで。
ここではニセ札防止技術の体験や、1億円の重さを知ろうという体験ができるそうだ。
「1億円って意外と軽いんだな……」
「1万円札1枚が約1gですからね。1千万で1kgなのでそれの10倍と考えればこのぐらいですよ。とはいっても、湿気とかを吸ったらもう少し重くはなりますが」
「さすがお嬢様……」
それぞれ自分の財布の中にある紙幣を取り出し、資料館を見て回っていた。
「なぁ、月能。阿久津家の総資産っていくらぐらいなんだ?」
金のことについてみて回ってふと気になった。
総資産額。それは茂治さんからも聞いたことがない。
「総資産額ですか? たしか……。5兆9800億3200万ぐらいだった気がします」
「……阿久津家やっべえ」
「先祖代々経営で稼ぎまくっていましたからね。相続税とかいろいろやばかったらしいですよ」
「それでもなおその資産額? やばくない?」
「私たちの住んでる家とかの不動産含めてですから。紙幣で持ってる分は少ないですよ」
それでも計算しても兆はいってるだろ。
そんな阿久津家を私が継ぐ。うーん、すっげえプレッシャーだな。こうしてお金のことについて考えると少し嫌な汗が流れる。
茂治さんは気楽に考えていいといってはいたが。
「さて、皆さま。お金の歴史や製造方法などは知れましたでしょうが、お金についての法律についても少しは学びましょうか。部屋を用意しているのでこちらへどうぞ」
と案内されていったのは会議室。
それぞれ席に座るように言い渡され、私は月能の隣に座る。プロジェクターにはお金に関する法律という名前だけが映っていた。
「では、法律について少しは学びましょう。お金は人を狂わせるものですので、いざこざがあった場合、法律を知っておくと便利ですから」
「そうですね。結局は法に従うしかありませんから」
「まず、皆さまが買い物した時、30円のモノを買おうとして小銭が1円玉しかなかったとしましょう。1円玉で30円を支払えるか否か。正解はわかりますか?」
あー、それか。
どうなんだろうな。多すぎても店側にとってはダメだろ? 法律的にダメだったりするのだろうか。
「法律的にはダメではないですが、店側は受け取り拒否ができますね」
「その通り! 千円札などは何枚でも使えますが、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉は補助通貨といいまして、額面の20倍を超えたら店側は拒否できるんです。これは納税なども同じですね」
そうなのか。
じゃあ1円玉は20円までしかダメということか。
講演は進んでいき、最後に質問コーナーとなった。
質問はないかと問われ、ある男の子が手を上げる。
「漫画で十日一割ってありましたがなにがいけないんですか?」
「それはですね」
「いや、普通に考えたらダメだろ。10万借りて十日で利子含めて返せるかって言われたらノーだろ」
「そうですね。バイトをしていればわかりますが、給料日は月末か月初めのどちらかが多いです。1万円くらいのものならば日雇いバイトをすれば返せるかもしれませんが、金額が大きくなればなるほど返せません。よくある多重債務者の流れは借りた金を返すためにまた違う闇金から金を借りて返すっていうんですよ。皆様はそうならないようお気を付けくださいね」
金というのはやはり恐ろしい。




