修学旅行・小樽編 ③
私はホテルの部屋で反省文を書かされていた。
喧嘩したことがばれたらしく、反省文を書くようにということ。人を守るために喧嘩したってのになんか複雑な気分だな……。
書き終わり、私は大浴場のほうに行くことにした。
「お風呂お風呂ーっと」
浴衣を脱ぎ、下着を脱いで私は大浴場に入っていく。
一般のお客さんもいたり、うちのクラスの女子もいるようだった。私はかけ湯で身を清め、とりあえず普通の温泉に入ることにした。
律儀に壁に湯の温度が示されて41度くらいのお湯らしい。
「あ゛~~~~」
「市ノ瀬さん親父っぽい」
「あん? あー、まぁ、こういうもんだろ……。疲れたなー今日も……」
お風呂は体を休める場所だ。
浴槽にもたれかかり、天井を仰いでいると隣にクラスの女子がやってくる。
「うわ、市ノ瀬さんおっぱいでかっ! ほそっ! 色白っ! すごい……」
「ああん?」
「体もシュッとしてるしすごいな……。喧嘩って体使うからこういうのなのかな」
「金髪って地毛なんだ! ハーフだったりするの?」
「あ? ああ、生んだ母親がドイツ人だな」
「そうなんだ! いいなぁ、外国人の顔立ちっていいもんねぇ。うらやましいなぁ……。ねぇ、ほかにこんな美貌を保つために何かしてるの? 毎日サプリ飲むとか!」
「特にしてねえな。寝る前に少し走ったりはしてるが」
「やっぱ運動が大事なのかなー」
見た目なんてどうでもいいだろうに。
私がクラスの女子に絡まれていると、突然私の顔面に大量の水がかかった。
「…………」
「すいませんっ! こら、泳がないの!」
「あはは! おねえちゃん金髪ー!」
「……ちっ」
私は溜息をつく。
「市ノ瀬さん……子供がしたことだから、ね?」
「あ? 怒ってねえけど……。それより、まぁ……そうだな。えっと、子供」
「なにー?」
「お風呂はプールじゃないからな。泳がないように。私がこわーいお姉さんだったら困るだろ?」
「うん?」
「わかんねえならまあいいけど……。ここはな、みんなが使う場所だからな。そういうやっちゃいけないことは守るんだぞ」
「うん? うん!」
わかったのかわかってないのかはわからないが元気な返事だけは返ってきた。
「お姉ちゃんふりょーって人? 髪染めてるの??? お兄ちゃんと同じだね!」
「いや……私は地毛だ。不良ってのはまぁ間違ってないかもしれないけど……。私は外国の人とのハーフだからこんな髪の色してるんだ。な? 私には半分外国の人なんだ」
「そーなんだ!」
「まぁ、良かれと思って忠告だけしておくけど人を安易に不良なんて言わないほうがいいよ。お前のお兄ちゃんは不良かもしれないが」
「わかったー!」
「わかったなら親御さんの元に戻るんだ。ね?」
というと、すいませんと親御さんが声をかけてきた。
「ハーフなんですか?」
「あ、そうっす。ドイツ人と日本人のハーフで」
「へぇ……。うちの子が本当に申し訳ありませんでした」
そういって、子供を連れて行ってしまった。
「市ノ瀬さんって子供あやすの案外うまかったりする?」
「いや、うまいとかしらん。ガキとかかわったことってほとんどねえし」
「でも注意の仕方とかものすごくうまかったよ!」
「そうか?」
普通だと思うけど。
「でも怒ってなくてよかったー……」
「あれぐらいじゃ怒らねえよ。あれぐらいでキレてたら疲れるわ……。風呂は疲れに来る場所じゃねえだろ」
「浸かりにはくるけどね!」
「オイお前今自分うまいこと言ったと思っただろ」
ここで上手いこといえってわけじゃねえよ。




