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アイドルと食事

 カラオケでひとしきり歌い終わった後は昼飯にいくことになった。


「……」

「どったの?」

「昼めし食う金がねえ」


 気が付いたら財布に50円しか入っていない。

 そこまで財布に金を入れてないと思っていたが、50円しか入ってないとは思わなかった。レストランで私はそういうことを言っていたので、まぁ、仕方ないかとは思いつつ。


「昼飯抜くか……。しゃあねえ。払えねえし」

「別に一食くらい奢ってやんよ。だから頼め」

「いいのかよ」

「さっきはいいもん見せてくれたし、うちのスガがお前さんを疑っちまったからな」


 というので、昼飯にありつける。


「言ってくれたら私が払ってもいいんですよ? 金はまだまだたくさんありますし」

「あんたの場合借り作ったら怖そうだからやめておく」

「怖くないですよ? ね? 衣織」

「うーん……」

「ね?」

「うん!」


 脅してるだろそれ。

 私はメニューを開く。場所はファミレスだけど、季節のメニューとかもやっているみたいだ。私は明太クリームパスタを頼むことにした。さすがに奢ってもらうのに高いのは頼めねえしな。

 一番安かった明太クリームパスタでいいだろう。


「明太クリームパスタでいいわ私」

「それでいいのかよ」

「もっと食べてもいいんだよ? 僕も悪いと思ってるからさ」

「女に毒吐くようなやつ、悪いと思ってるっていわれても信じることは無理だろ……。いんだよ。別に私は昼飯抜きでも問題ねえし……」

「ご飯はちゃんと食べないと駄目ですよ」

「だからこうして頼んでるんだろうが」


 私はメニューを本田に渡す。本田はメニューを開く。


「んじゃ俺はハンバーグでいいわ。大盛チャレンジのやつにする」

「食えんのかよ」

「なめんなよ俺を。こんだけの量余裕だっての」

「だといいけど……。制限時間に間に合わなかったら一万かかるって書いてんのに大丈夫かよ」

「大丈夫ですよ花音」

「昔から大食いだしねー。私は普通のハンバーグにしよぉ!」


 ということで大体がメニュー決まったらしい。

 店員をボタンで呼び出し、それぞれ注文を述べる。やってきた店員は女の人で、女の人は目の前の男二人の正体に気づいてるのか若干声が高くなっている気がする。

 顔も赤く染めてるしな。


「あーあ、ああいうのまじうぜえ」

「スガ……」

「菅原さん?」

「あ? ああ、いや、悪い悪い。クセになってんだ。それより……。ゲームでの話しようよ」


 そういって、水をぐいっと飲み干した菅原。


「ゲームでは何するんだ? あの街に行ったはいいが、クエストとか受けるんだろ?」

「そうですね……。まぁ、クエストを受けましょうか。それか、冒険者ギルドで依頼を受けてもよいかもしれませんね」

「んじゃ、依頼のほう先にこなそうぜ。まだ冒険者ランクもあげられてねえしな。忙しくて。あげれるうちにあげておきてえわ」

「では、依頼消化しましょうか」


 そう話していると、メニューが運ばれてくる。私の明太クリームパスタが一番先だった。フォークを手に取り、巻き取りながらクリームパスタを食べていると、ものすごくどでかいハンバーグが運ばれて、本田の前に置かれる。

 店員が近くに立ち、ストップウォッチを手にしていた。


「では、時間を計測させていただきます」

「構わねえよ。んじゃ、いただくとするか」


 本田はフォークとナイフを手に取り、ハンバーグをぱくぱくと軽快に口に運んでいく。食レポみたいなのはしなく、ただただひたすら食べていた。

 他の三人のも運ばれてきて、それぞれ美味しそうに食べているが、本田だけむすっとした顔で食べている。


「……ふぅ」


 クリームパスタ一人前は食い終わるのが早く、私は誰よりも早く食べ終わっていた。


「あ、クソ! 俺が先に食い終わるつもりでいたのによ」

「……すげえ」


 あんなでかかったハンバーグがもはやなくなっている。

 チャレンジメニューはご飯も大盛りだったはずだが、ご飯もすでに空っぽ。残りはみそ汁とお新香だけになっていた。

 ずずずーとみそ汁を飲み干し、お新香をぱりぱりと平らげる。


「ごっそさん」

「唯臣……。よく噛んで食えよ」

「いんだよ。ふぅ、腹膨れた」

「すごい……。大盛メニューなのに10分もかかってない……」

「これでお代無料だろ? あんがとさん」


 そういって、本田はスマホをいじりはじめた。


「今賞品のデザートもお持ちいたします」

「あー、賞品あんのか。甘いもんそんな好きじゃねえけど」

「じゃあ私が……」

「花音にやったらどうだい? 唯臣」

「そうだな」


 と、デザートが運ばれてくる。デザートはマンゴーシャーベットだった。


「やるよ」


 というので、ありがたく受け取る。


「むー、私が立候補したのに!」

「ごめんごめん。これお詫びもかねてだから許して?」

「許す! 私も子供じゃないからね!」


 私はシャーベットを食べる。

 うん、マンゴーはとても美味い。一番好きな果物だからな。マンゴー。


 マンゴーシャーベットを平らげた。


「ごちそうさん」

「皆も食べ終わったみたいですし、そろそろ帰りましょうか。顔合わせですし……」

「そうだね。帰ってゲームしようか」

「ん」


 私たちは立ち上がり、ファミレスを後にして、その場で解散となった。

 私は月能についていく。


「どうしたの?」

「金貸して」

「……電車代?」

「そう。食事代もねえってことは電車代もねーんだわ」

「借り作るの嫌って言ってたくせに……」

「それもそうだが、前に助けてやっただろ? そのお礼として」

「ま、いいですよ。電車なんて乗らず私の車で送りましょう。あなたは友達ですから。そんな借りなんて考えなくてもいつでも力貸しますよ。持ちつ持たれつでいきましょう」

「……ああ。わか」


 そう話していると。


「私も送って!!!」

「衣織もですか?」

「財布見たら1円しかなかった! 歩いて帰るの嫌だし送って!」

「仕方ないですねぇ」


 そういって、私たちは月能の車に乗り込んだのだった。








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変態、ゲームに立つ!
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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