エリクサー
結局ゲームにログインできたのは月曜の夕方くらいだった。
昨日は馬に乗り疲れたのか、帰ったらすぐに眠ってしまい、ログインできずにいた。そして、学校から帰ってきてログインする。
アルテミスはすでにログインしているようで、アルテミスの部屋に雪解け水を持っていくと。
「おや、ずいぶんと遅かったじゃないか。現実のほうで立て込んでいたのかい? ログインしてなかったみたいだからね」
「まぁ、いろいろとな。これ、雪解け水な」
「おお、あとはタゴサク君に頼んでいるサンキウの薬草を来るのを待つだけだ。あとそろそろでエリクサーに必要な材料はすべてそろう。さぁ、エリクサーを作るのだよ。この世界じゃ、エリクサーの価値はものすごく高いからね。それこそ……君が所持していた星の夢と同等くらいには」
そんなすごいものを……。
すると、拠点にツナギを着たタゴサクが入ってきたのだった。薬草が入ったかごを地面に置く。アルテミスは薬草を手に取り、たしかにサンキウの薬草だといっていた。
「数は取れたが……足りるか?」
「大丈夫だ。ただ、サンキウの薬草はエリクサーにする場合、結構な数を使う。10束でようやく一つできるようだよ」
「となると、収穫数は200だから……20個か。量産はちと厳しいか」
「だね。量産するとならばもう少し農地を広げる必要があるだろうね。どうだろう。私の専属農家になるつもりはないかい?」
「専属か……。それも悪くはねえな」
「サンキウの薬草を卸すのは私にだけ。今のところ、レシピを知っているのは私だけだからね。とりあえず、一本作ってみようか」
アルテミスはサンキウの薬草の束を持ち出し、錬金釜に投げ入れたのだった。そして、組んできた雪解け水を注ぎこむ。
錬金術って割と時間かかるイメージあるが。
「工程はそれほど多くはないが……。ただ、煮詰めるのに多少なりとも時間がかかる。10分程度かかると聞いている」
「結構長いのかそれ」
「普通のポーションは2分くらいで終わるといえばわかるんじゃないだろうか」
「あー」
5倍か。
「ただ、面白い反応をしている。見たまえ」
と、私たちは錬金釜をのぞき込むと。
「あれ、サンキウの薬草って緑色だよな? 青……赤になった?」
「どうなってんだ?」
「原理は私もわからないがねえ。ただ、色が変わるというのはなんとも科学的で面白いだろう?」
「たしかに」
私たちは10分間、錬金釜を見ていた。
そして、出来上がったエリクサーは薄い黄緑色の液体。アルテミスは飲んでみようと、ビーカーを三つ取り出し、三人に均等に分ける。
全部飲まないと回復効果は半減するらしいが、味の確認だろうな。
「エリクサーってどんな味かは気になるな。いただきます」
私はエリクサーを飲み干す。
うーん、飲んだことあるなこれ。
「エナジードリンクのような味だな……。苦手な奴は苦手だろ」
「気の抜けたエナジードリンクだねぇ。商品で言うならば……。そうだねェ。バッグブルーに近いといえばいいだろうか」
「あー、それだ。そのエナドリは俺もよく好んで飲むから俺はこの味すきだぜ」
「美味いな。なんか元気出そうだ」
エリクサーってこんな美味いのか。
「さて、私はフコククランに卸すためのエリクサーを作るとしようか。10本。ふむ、まとめて作れるから時間は先ほどと同じでいいにせよ、10本はこう考えるとあげすぎな気もするが……」
「土地代のほうが多いくらいじゃねえの。原価考えたら」
「そうだねェ。雪解け水は自然にあるもの、だからね。それに、サンキウの薬草の種はまだある。きっとタゴサク君も持ってるだろう?」
「ああ、種は回収しておいたぜ」
「だろう? それを次植えるといい。だがしかし、その話は私の専属になるかどうか聞いてからだがね。君がだめならほかの人を探す。無理にとは言わないよ」
「いや、しばらくは専属でいてやるよ。ただ、俺も必要なものがあったら無償で頼ませてくれるのならいいぞ」
「いいだろう。戦闘方面はどうせ私ではないからね」
「私に頼むつもりだろ。まあいいけどよ」
戦闘方面は全部私だ。
戦闘といやぁ、ワグマたち、きちんと修行してるんだろうか。強くなるからと私と距離を置いてはいるが、一週間程度はそろそろ経つ。
一週間でなにかしらは得られているはずだとは思うけれど。
私がそう考えていると、メッセージが届く。
オイリからだった。
『裸足状16:00にて、天貫山のコロシアムで待つ』