改心
私は南国や北海たちと同じ席で食事を取る。
「え、あれ頼まれてたの!?」
「ぶち壊そうとしたわけじゃなくてですか〜?」
「……ああ」
と、東山が告白。
今回のことは茂治さんに頼まれていたらしい。不良である過去を受け入れてもらうために。
「じゃあ最初に汚いと言ったのもですか〜?」
「うぐっ……」
「アレは素だろ」
「…………」
「ではどういう心境の変化なんですの〜?」
北海が容赦なく踏み入る。
「……喧嘩の映像、見てよ」
「はい。あれはどこで撮影していたのかは知りませんが〜……」
「アレを見て、カッケェなって……」
「思っちゃったわけだ。男の子は単純だな」
「うるせぇ! ただ、ああやって人を守るために死ぬ気で戦う奴なんていねえだろ……。フツー、拳銃とか出されたらビビるだろ」
ビビるか。
まぁ、たしかに己の命優先にすべき場面かもしれないけど、あそこで引くわけにもいかなかったしな。
「なんで……お前はそこまで怖いもの知らずなんだよ」
「怖いもの知らずな理由かー。怖いものを学んでこなかったからかもな」
「なんとなくわかるぜ。そういう教育とか受けて来なかったろ」
「ああ。養護施設じゃ暴力沙汰は当たり前だったし、殴って勝ったら殴って来なくなったしな。そういうのが当たり前だったんだよ」
「周りがそうさせたんだね……」
「人は環境によって育ちが変わりますもの。東山様のように」
「うっ」
「東山様のご両親は選民主義が激しいですもの。子どももそうなるのは当たり前ですわ〜」
「だな」
北海も意外と言うな。
東山が最初ああだったのは東山の両親が原因らしい。となると……。
「東山、私と話してるところ見られたらまずいんじゃねえの」
「南国も北海も西谷もいるし大丈夫だろ。俺もそろそろ自立しなくちゃいけねえし」
「自立ねぇ……。できんの? 何でもかんでも親に頼ってた奴が」
「しなくちゃいけないだろ。あんなかっけえとこ見せられたら、俺だって」
と、何かを決意したような目をしていた。いい目をしている。
人は成長するものだ。東山も根はいい子なのかもしれないが……。何か企んでいたりするのか?
「……そういって反省したふりして阿久津家に取り入るつもりなんじゃないの?」
「あなたはこの四家のなかで唯一の男ですからね〜」
「まぁ、そう考えられても仕方ねえよな。でも、実際のところどうなんだろうな。うちの両親は地位を欲してるが、阿久津家の後継ぎがお前だろ? そうだとして、うちの両親は地位を取るか感情を取るか、気になるところではあるよな」
「流石に地位だろうよ」
「東山に実権握らせて、花音ちゃんをポイーってもできるしね」
「ああ、そういうことさせそうだな」
あくまで欲しいのは阿久津家という血筋だろうし。
「とりあえず、俺は本気で反省した。本当に悪かった」
と、頭を下げた。
頭を下げた東山に厳しいことが言えなくなる三人。
「頭上げろよ。別に気にしてない。汚い生まれなのも、何もかも事実」
「花音ちゃん、そういうこと……」
「私としては、どこでどう生まれたかより、どう生きるかが大事だと思ってんだよ。生まれだなんだで人生決まってたらつまんねえだろ」
「それもそうだ。オレも花音に共感するぜ」
「まぁ、一理ありますわね〜」
「それもそーだ……」
だから私はもう生まれがなんだのと言うつもりはない。
「どう生きるか、か。っし、元気出た。俺、ちょっとやってみるか」
「やってみる?」
「東山家乗っ取り。うちの両親がいるから成長しねえんだ。阿久津家に頼らざるを得ないのも、何もかもあの両親のせい。俺が変えるしかねぇ」
「おお、男の目をしている!」
「ふふ、もう以前の東山様ではないようですね〜」
「肝が据わったんだな」
「ああ。どうしても無理な時は、お前らに知恵を借りる。あくまで知恵だけだ。頼む」
「オレでよけりゃ手助けしてやんよ」
「私もいいですよ〜。面白そうです」
「東山のためだもんね!」
三人も協力的なようだ。
東山の野望は、すごくまっすぐ。ギンギラギンと射るべき獲物を見定めている。
人間、本気になったら強いぞ。