クイーンアルラウネ
天貫山の雪解け水を採りに再び舞い戻ってきた。
その雪解け水は天貫山の頂上にあるタトルバレーの森の奥地というダンジョンの奥にあるのだという。
カイゼルをダンジョンの前に残し、私は単身でそのダンジョンに潜ったのだった。
ダンジョンの敵は獣系が多かった。
私は雑魚を無視しつつ、一目散に最深部まで向かっていく。すると、最深部には泉があり、そこが雪解け水がたまった泉であることがわかった。
その前には足元が木の根っこになっている女性がいた。花かんむりを頭にのせて、私を見てくる。
「やっぱボスいるよな」
私は指を鳴らす。
そのモンスターは手招きしてきていた。かわいい女性の顔を持ち、豊満なボディ。いわゆるアルラウネと呼ばれるモンスターだろう。
私はとりあえず、一発ぶん殴る。
「キキィ!」
と、顔から赤い血液を出し、こちらをぎろりと睨みつけてくるアルラウネ。
すると、木の根っこが地面から出てきて、私の足をつかもうとして来ていた。私は飛び上がり回避。
アルラウネはなんとか私を捕まえようと蔓や木の根っこを私めがけて飛ばしてくる。
「そんなんじゃ無駄だぜ! まずは一撃!」
私は黄金武装した足の鉄球を思いきりぶつけたのだった。
アルラウネの顔が少し崩れる。顔にひびが入り、こちらをぎろりと睨み続けるアルラウネ。私はそのまま攻撃を続ける。
すると、私の背後から蔓が伸びて、私の首をつかんだ。首を絞める植物の蔓。徐々に体力が減っていく。
「油断……してたな……」
私は力を込める。が、抜け出せそうもない。
私は首元をトゲトゲ武装でトゲトゲにすると、蔓がトゲによって引き裂かれたのだった。植物は植物なので、こういった鋭利なものに弱い。
私は首をこきこき動かし、トゲトゲ武装を解く。
「今度から油断しねえぞ」
「キキィ……」
「さぁーて! とどめを……」
と、私がとどめを刺そうとすると、背後になにやら黒くうごめくものがあった。アルラウネの背後には黒いハートのようなものがある。
なんだこれ。これがアルラウネの核だろうか。これを破壊しておけばもしかしたら一瞬で終わったのかもしれないな。
「……なんで今更これを見つけんだよ!」
もう相手の残り体力も少ねえってのに。一発で終わらせられるんならそっちのほうがよかったのだが。
私は嘆くが、嘆いてももう遅いってことには変わりはない。しょうがねえ。破壊してやるか。
私は拳で思い切りそのハートのような形をしたものをぶん殴る。すると、アルラウネは突然頭を押さえ、もがき苦しみ始めた。
「キキィー----!」
と、もがいていると、黒い煙がシュウウ……とアルラウネの体から出ていく。だがしかし、倒れることはなく、消えることもなかった。
死んでない……? くそ、じゃあさっきのはなんなんだよ。
「……あれ? 私は」
「ちっ、まだやんのか」
「ちょ、ちょっと待ってください、旅の人」
「ああ?」
と、待ってといわれる。
そういやこいつ、喋れるんだな。さっきはキキィとしか喋ってなかったのに。私は攻撃を止める。アルラウネはさっきのような怖い形相ではなく、穏やかな表情に戻っていた。
「申し訳ありません。私はあなたを襲っていたようですね」
「ああ?」
「面目ないですね。私はなぜか不思議な力に支配されておりまして……。自我をなくしてしまっていたのです」
「自我をなくしてた?」
不思議な力に……。
「その不思議な力から解放していただきありがとうございます。このご恩は……」
《アルラウネクイーンをテイムすることができます》
《テイムしますか?》
というアナウンスが。
「私があなたの仲間になるというのはどうでしょうか」
「仲間に? 移動できんのまず……」
「問題ありません。こう、木の根っこでこういう風に移動できます」
うねうねと木の根っこが地面から出てきて木の根っこが歩き出す。ちょっと不気味すぎるが、まぁ、歩けるなら問題ないだろう。
「んじゃ、テイムするよ」
「ありがとうございます。名前などよろしければつけていただきたく」
「名前? あー」
名づけか。また名づけか。苦手なんだよな。名づけんの。
「……適当にラウネとか」
「ラウネですか。わかりました」
アルラウネだからラウネ。まぁ、安直だけどいいだろう。