サンキウの薬草畑
畑にも種を植え、次の日を迎えた。
アルテミス曰く、このゲームは収穫までの周期が短く、一日で発芽、五日で収穫できるのだという。
まぁ、何ヶ月も経っていたら農業プレイヤーは農業楽しめないしな。
「芽が出ていない……。どうやら失敗のようだ」
「原因は?」
「わからない。まぁ、一度で成功するとは思っていないさ。エリクサーの材料になるものだから普通のやり方では無理だとは理解している。けれど…‥わからないねェ。文献などは昨日読み耽ったがそれらしき記述もなし……。情報がぬいと、色々試行錯誤してやらないといけない手間があるのがなんとも非効率的だ」
ブツクサ言いながらも顎に手を当てて考えている。
植えたもの一つでも発芽していないかと希望を持っていたが、屋内は全滅。
「まぁいいさ。外の空気が必要ということかもしれないしね。ただ、屋内でこの有り様なのだからなんとなく想像はついているが……。まぁ、念のため向かってみるとしよう」
ということで、昨日購入して種を植えた畑を見に行く。
畑があるのは王都郊外の畑エリアの一角。隣には有名農業プレイヤーのタゴサク畑がある。
タゴサク畑はとうもろこしやトマトなどを栽培して、無人販売所を設けて売っているようだ。
「まぁ……想定通りの結果だ」
私はアルテミスの畑に目をやる。何も生えていなさそうだ。
だがしかし、まぁ、割と面積が広いので一つ生えているのを見落としてる可能性もあるが。
「ふむぅ? この一面だけ芽が生えて……?」
「ほんとだ。なんでだろ」
「あー、そこ僕が水やってみたんだよね」
「む? 君はタゴサク君。君が?」
「うん。なんか珍しいものだったから鑑定してみたんだよ。そしたら農業スキル必須っていうらしかったから試しに僕がかけてみたんだ」
「なるほど。農業スキルが……。いやはや、盲点だった。必要になるのか……」
農業スキルがあって水やりすると芽が生えるということか。
なら私たちが成功しないのは当たり前だな。農業スキルは職業農家にならないと手に入らないスキル。
「勝手にかけてごめん」
「いや、気にしないでいい。まぁ、農業スキルが必須ということは私には栽培は無理ということが理解できた。今から農家になるのも無理だし、タゴサク君。対価はもちろん払う。サンキウの薬草を栽培してくれないだろうか」
「ああ、いいよ。収穫したらどこもって行けばいいかだけ」
「この地図の建物に持って行けばいい。ここは私の拠点だからね」
「わかった。任せて」
ということで、私は余っているサンキウの薬草の種を全部渡したのだった。
これでサンキウの薬草は数が手に入るだろう。だがしかし……。
「エリクサーってサンキウの薬草だけでいいのか?」
「それだけでもエリクサーの効果は出るらしい。ただ、最高ランクにするには天貫山の雪解け水というものが必要になるみたいだ。その雪解け水はダンジョンにあるという情報はあるよ」
「ってことは私の出番か」
「ああ。雪解け水をたくさん汲んできてくれないだろうか」
雪解け水をゲットしに再び天貫山へ。
「これエリクサーの素材なの?」
「そうさ。やっと、エリクサーのレシピを見つけてね」
「へぇ……。エリクサーやっぱあったんだ」
「ゲームではよくあるものだからな……」
「……じゃあ、この畑だけじゃなく僕の畑の一部の作物を引っこ抜いてサンキウの薬草畑にしようかな。やっぱ数作りたいっしょ?」
「数があればあるだけ助かるが……いいのかい?」
「いいよ。ただ、君達だけじゃなく、他の人にも売ることになるかもしれない。それだけは了承してほしい」
「まぁ、いいだろう。ただ、サンキウの薬草がエリクサーの素材になることはまだほとんどのプレイヤーが知らない。しばらくは私たちだけしか来ないだろう」
「そもそも錬金術師の数がそこまでいないってのもあるよな」
錬金術師は少ないからな。
農家とかは趣味の範疇だが錬金術師に関しては、漫画とかだとド派手だが、やってみると実際地味。だからやめるやつが多いんだよな。
「さて、じゃ、私は雪解け水を取りに行くかね」
拠点戻ってカイゼルにのって。




