土地代探しに
私たちは一度拠点に戻り、ワグマの許可をもらった一室を畑に改造していた。
屋内の畑でサンキウの薬草が本当に育つのだろうか。農業についてよく知らないが、こういうのって水のほかに太陽光なんかも必要なんじゃないだろうか。
「太陽光とかはどうすんだ? 作物には必要じゃねえの?」
「太陽光と同じ性質を持つ光を放つ魔道具を設置しよう。なに、屋内で育たなかったら土地を買って外でも育ててみるとしよう」
「土地を買う金が必要になるな」
「問題はそこなのだよ」
やっぱ金か。
私の今の手持ちは多いほうじゃない。貸すにも土地代には遠く及ばないだろうし、アルテミスもアルテミスで金がないのだろう。
「仕方がないか。金策に走ろう」
「金策ねぇ。私も協力してやるけど……。どういうことすんだ?」
「私の場合は錬金で作ったポーションを売るのが現実的だろうねェ。ただ、それでも店の場所などの問題があるわけだが……」
「あー」
「移動販売も考えたが……移動販売の場合、所持できる個数に制限がある。いちいち戻ってくるのも手間だろう」
「たしかに」
アルテミスの場合、組織に属しているからこそ困っているんだろうな。店を持っているわけでなく、私たちのために作ってるってわけだから。
ワグマに借りることはできないかとは思うが……。ワグマ、一室を貸したでしょうとかそういう細かいのは気にするからな……。
「しょうがねえ、フレンドを頼るか」
金持ってそうなのは……。
「土地代がないから金を貸してくれ? ああ、いいぞ」
と、私が訪れたのはフコクのところ。
鍛冶職人ばかりのギルドだ。最初のころ武器を作ってもらって、用心棒に勧誘されたところ。フコクとはたまにメッセージを送り合っており、近況報告などを互いにしていた。
現地には久しぶりに来たけどな。
「そんなすんなりいいのか?」
「ああ。ま、怪しいことするわけじゃねえだろ」
「まぁな」
フコクは私に土地代として3千万グランを手渡してきた。
結構な大金。
「すっげえすんなりだせんだな。さすが大手」
「ああ、結構儲かってるからな。それで、いつ返せる?」
「わからん……」
「わかんないものに使おうってのか?」
「いや、栽培方法が樹立されてないってだけなんだが」
「何を育てようっての?」
興味本位で聞いてくるフコク。アルテミスがそれにこたえる。
「サンキウの薬草という薬草さ。エリクサーの素材となるものらしくてね。エリクサーを量産するために栽培するのだが……。サンキウの薬草はもともと自生しているものなんだ。育つ条件を我々は知らなくてね。一応拠点の一室を畑に改造して作ってはいるが、多分あっちはうまくいかないだろうと踏んでいる」
「エリクサーの……。あー、ならその3千万グランは返さなくてもいいぜ」
「……なぜだい? 借りたものは返すべきだろう」
「貸したんじゃなくて投資したってことにさせてくれ。その代わり、エリクサーができたら真っ先におれんとこにくれ。10本でいい」
と、フコクが思いもよらない発言をしてきた。
金は返さなくていいっていうのはたしかに魅力的だけど、エリクサー10本か。それって割に合ってるのか? こっちばかり得してないか?
「ふむ、等価交換ではないだろう。明らかにこっちに分がありすぎる」
「はっはっは。気にすんなよ。ゼーレには前に助けられてるからな。それに、ゼーレの名前を勝手に使わせてもらってるのもある」
「私の名前をか?」
「悪いな。ゼーレ御用達って銘打っておくと悪いやつはそこまで来ねえんだよ。それに、トッププレイヤーが使っているならってことで注文も多く受けてるしな」
「あー、そうなのか」
「嫌だったか? 嫌なら今すぐやめるが」
「いや、いいぞ」
別に有名になってもいいし。
「んじゃ、がんばれよ薬草栽培」
「ああ、ありがとな」
これで一応土地は買うことができるだろうか。