スキルを買った
スキル販売店ではすでにあいつらがスキルを吟味していた。
うーんと唸りながら悩んでいるようだ。スキルは今作、○○斬りとかいう必殺技のようなものは一切なく、魔法や能力アップスキルしかない。
戦闘スキルは自前で磨くしかないというので、戦いが苦手な人、運動神経がマジでない奴は戦いづらそうだ。
まぁ、少しは戦闘補正を付けることができるみたいだが……。
「決まったかよ」
「あ、ようやく来たんですね。実はまだ決まっていなくて。二択までは迫れているのですか」
ワグマは光魔法か闇魔法で悩んでいるようだ。
うーんと唸りながらオイリもものすごく悩んでいる。あいつの場合は優柔不断だから二択まで迫った時が一番時間かかるんだよな。
私はオイリにも何で悩んでいるか聞いてみるか。
「何に悩んでんだよ」
「んー、この自動体力回復スキルとねぇ、防御アップスキル」
「自動体力回復にしたらいいんじゃねえの」
「……じゃあそれにするっ! これくーださい!」
と、私が決めるとそれにしたようだ。
案外素直に言うことを聞いてくれたな。オイリはその自動体力回復スキルの種を購入して、私に見せびらかした。
「へっへーん。で、この種どうすんの?」
「食べるんだろ」
「なんか梅干しの種みたいで硬くてまずそう……」
「見た目はそうだが食べたらおいしいかもしれねえぞ?」
「いただきます」
オイリはぱくっと口に放り投げた。もぐもぐと咀嚼する。
「味はおつまみであるようなナッツみたいな感じかな。ちょっと塩気があって美味しいかも。何個でも行けそう」
「何個も行くな」
「お、自動体力回復スキルを取得したって来た! やっぱ食べるんだ」
オイリは決まったようだ。
そして、ワグマのほうも決まったようで、闇魔法にすると言って闇魔法を購入し、こちらにやってくる。
「さ、最後はゼーレだけです」
「私はいい。道中、ちょっとスキルもらえたからそっちで使った」
「そうなんですか? ならいいですね」
ワグマは買ったスキルの種を口に放り投げてそう言った。
「たしかに。これ美味しいですね。ナッツが好きな人は本当に好みの味です」
「でしょー?」
「これで闇魔法を使えるようになりました。さて、いきましょう」
ワグマがそういうので私たちは店を後にした。
「で、どこいくよ?」
「そうですね……。始まりの街の探索もいいですが、もう十分だとは思いますので次のところにいきませんか?」
「次っつっても海方面と山方面あるし、村や都市なんていくらでもあるぞ」
「海か山、どっちがいいです?」
「山」
「山!」
「では次はフレッツェン侯爵領領都に向かいましょうか」
次の目的地はその領都ということだ。
侯爵、か。貴族だよな。この世界にも貴族がいるのか。原始的な時代ではなく、貴族が領地を統治する貴族制をとっている。
貴族っつーのは日本の政治家と同じで偉そうにしてんだろうな……。そういうの想像しちまうといっきにイライラが増してくる。
「フレッツェン侯爵領領都についたらログアウトして、冬休みの別荘の準備に私は入ります。もうそろそろですからね」
「あっちの掃除とかあるからか?」
「はい。そういう手配もしておかないとですし、雪もたくさん積もっているでしょうから一日二日じゃ足りないかもしれません。結構雪が降る地域に別荘がありますし、北海道じゃ異例の大雪の日が続いているようなので」
なるほど。雪か。
「近くにスキー場とかあるか?」
「ありますよー。リゾートホテルが経営するスキー場があります。そこは会員限定ですが、私は毎年そこでスキーをするので会員なんですよ。結構VIPなのであなたたちもいれることができますよ」
「まじで? じゃあ頼もうかな。スノボしてえし」
「はい。わかりました。オイリは?」
「私はいいかな……。スキーとか転ぶし、スノボも論外だし……。雪だるま作る以外できないもん」
「スキーなら教えてあげられますよ?」
「運動音痴だからいいもん」
オイリはそう言ってむくれる。
オイリは運動音痴かといわれれば、割と疑問がある。というのも、体育の成績は悪くはないんだよな。
「でも私たちが滑ってるとなるとお前ひとりになるぞ?」
「そーなんだよねー……」
「というか、以前スキーをしにいくときありましたがその時滑れてましたよね?」
「ぎく」
「そうなのか?」
「あ、中学は一緒じゃないですもんねゼーレだけ」
こいつらとは出身中学が違う。オイリも有名な俳優、女優の娘だけあって中学は割と金持ちのところに通ってたらしい。
私はその逆で、不良が多い中学校だった。
「……だって、ちょっと太ったからスキー靴が入んないんだもん」
「でしょうね……。とりあえず靴はレンタルできますから」
「……でも太ったっていうよりかは成長しただけなんじゃねえの」
「いや、少し太ってるの……あの時より……。ふくらはぎとか太くなってるの」
そうなのか。