ロッククライミング
私たちは崖を登っていた。
魔物は当然のように出ず、ひたすら崖の出っ張りをつかんでは自分の体を引き上げという命綱なしのロッククライミングをしている。
私はすいすいといけるが、アルテミスは少し厳しいようだ。
「洞窟から行ったほうがよかったんじゃねえの?」
「何事も挑戦さ! まだまだ妨害工作のおかげで余裕はあるからねェ」
「さっきのはさすがに誰も引っかからねえんじゃねえの」
「甘いねェ。このレースは、だれがどこにいるかわからないものだよ。もしかしたらほかプレイヤーが先に進んでいるかもしれないという焦燥感。その焦燥感は判断力を鈍らせるのさ」
「簡易的な罠でも十分効果を発揮するかそれじゃ」
「そういうことさ。焦らずに行けばなんとかなるだろうけどねェ」
とりあえず、焦ってはならないという感じだな。
「だがしかし……。ゼーレ君。私はもしかしたら死ぬかもしれないねェ」
「は?」
と、私はアルテミスのほうを見る。すると、片手で宙ぶらりんになっていたのだった。ほかの足場とかが崩れて片手で支えるしかなくなっているようで、動けないといった状況。
私は仕方ないので、竜化してみる。部位しかまだできないが、もしかしたらということで。すると、私のお尻のほうに尻尾が生えてきていた。やっぱ竜にはある。
「つかまれよ」
「こういうこともできるんだねぇ。申し訳ない」
「ちゃんとつかまっておけよ」
アルテミスが尻尾につかまった。私は全力で崖を登っていく。崩れ落ちやすいでっぱりもあるようで、それをつかむと落下しやすそうだ。
私は全速力で駆け上る。崩れ落ちやすいとか関係なく、全力で。ものの十分で崖の上が見えてきて、私はなんとか崖の上に登ってきたのだった。
隣には川が流れており、水が落下していっている。この滝、ものすごい高さから落ちてるから威力もものすごいだろうな。
「さてさて、まだまだ道のりは長いねぇ。ここで死んだらさすがに嫌だけれど」
「そうだな……。またこれを一からやり直すのは心に来るな……」
滝はともかく、あのターザンは迂回路がねえ。あそこをアルテミスを連れてもう一度やるというのは厳しいものがある。
アルテミスは理論で動くから直感とかは本当に鈍いんだろうな。
「次に立ちふさがる障害は何かにもよるが……。その前に、目の前。あれは私たちのクランメンバーであるミナヅキ君たちではないかな?」
「会いたくねえな。さすがにあいつらの実力で二対一はきついもんがあるぜ……」
「だが、追い越さないといけないのは確かだねぇ」
「アルテミス、爆弾とか作れねえの?」
「レシピにある素材が今のところ一つしか見当たらないからねぇ。難しいものがある。温泉さえ見つかればなんとかなりそうだが」
ふむ、温泉か。