私たち以外敵である
霧の森を、ピンク色の花をもって私たちはやっと突破できた。
アイテムの使用がやはりカギだったようで、この花を手放すと再び霧に包まれてしまう。私は花を頭につけて、森の中を進んでいく。
「ゴオオオオ!」
と、私たちの目の前に馬鹿でかい熊が現れたのだった。
二足歩行で筋肉ムキムキの熊。私は黄金で武装し、そのままぶん殴る。ポーションとかがない今、鬼神スキルは使えない。
熊は一撃でものすごく重傷を負ったらしく、怯え始めていた。そして、逃げ出したいのか、後ずさりし始める。
「喧嘩売っておいて逃げるってこたぁねえだろ」
私は素早く距離を詰め、けり上げる。筋肉ムキムキの熊が宙を舞う。落ちてくる熊。私はそのまま顔面をぶん殴り飛ばしたのだった。
熊は吹き飛んでいき、死ぬ。霧となって消えて、アイテムをドロップしたのだった。私はドロップしたアイテムを拾う。アイテムは鬼蜂の蜜というもので、蜂蜜だった。
「回復アイテムか。蜂蜜は」
「さすがだねェ。戦闘は任せておいてもいいかな」
と、拍手を送ってくるアルテミス。
アルテミスは私の隣に立ち、行こうと告げるが、何か私は気配を感じてしまう。気配を感じたのはアルテミスも同じようだった。
魔物……じゃねえな。プレイヤーの気配だ。
「どこかにいるな」
「姿を見せないとなると……不意打ちしようとしているんだろうねェ。ならばさっき戦ってる間に調合していたこの薬を投げようか」
「んだそれ」
「幻惑の薬。この薬がかかったものは幻影を見るのだよ。どこにいるかがわかったら投げようと思う。ゼーレ君。攻撃を誘ってくれないかな?」
「わかった」
どこに姿を隠しているかは知らない、隠れている理由は私たちに魔物と戦わせて消耗したところをたたこうとしているのだろう。
だが無駄だ。気配を隠せていない。
「私が感じる気配はあの茂みからだ」
「ほう? では信じて投げてみてもいいかな?」
「違ったら悪い。私が全力で探して叩き潰す」
「信じよう」
アルテミスは薬を私が示した茂みの中にぶん投げ、ビンが割れる音が聞こえた。その瞬間、そこから男と女の声が聞こえる。
やめろと立ち上がり剣を構えている男と、杖を構えている女。
「幻影が途切れるのはあと少しだねぇ。効果は低いからすぐに切れる」
「了解」
私は距離を詰める。
「俺は何を……?」
「いなくな……あっ!?」
「よぅ、てめえら。振出しに戻りやがれ」
「ひい!?」
私は女のほうをぶん殴りキル。
女が消えていくと、男もいなくなったのだった。片方が死ぬとどちらもスタート地点に戻される。あの霧の森を攻略してきて残念だが、振出しに戻りたまえ。
「彼ら彼女らにとっては悪夢だろうねェ。森を抜けた先には鬼がいた」
「そんなこと言ってねえで、早く行こうぜ。ほかプレイヤーも着々と攻略を始めてんだろ」
「そうだねェ。ゆっくりしている時間はないが……まだだれか来るようだよ?」
「ちっ、キルするか」
私は森を抜けてくる相手を待っていた。
「ふぅ! やっとぬけたぁ!」
「長かったですね」
「……ワグマたちか」
「え、ゼーレだぁ!」
と、オイリが駆け寄ってくる。
「ダメです! オイリ!」
「ふぇ?」
「油断大敵だぜ?」
私はオイリを両手でしっかりつかみ、膝蹴り。
「ぐふぅ、なんで……」
「このイベントじゃ私たちは敵だぞ。敵にまんまとかけよるなよ」
「今回復を……」
「そうはさせねえよ」
私はオイリを振り回し、ぶん投げる。
そして、ワグマをぶん殴った。防御が低いワグマは一回の攻撃で死ぬ。
「悪いな。私たちもガチで勝ちに行くんだよ」
「……ついてないですね」
「ま、振り出しからがんばれや」
ワグマは消えていったのだった。
「仲間にも容赦ないとはさすがだねェ。敵に回したくないものだ」
「私もお前だけは不思議と敵に回したくねえよ」
こいつ、戦闘の時にワグマに回復をさせないために動いていたからな。というか、アイテムを盗んでいた。
頭の花を。ワグマも攻略法を見つけたが、花を奪われたからまた探すところから。お前余計な手間をまたさせるつもりか。
こいつもこいつで敵に回すと厄介だ。