竜覚醒
冒険者ギルドに入り素材を売って外に出る。
外に出ると、なにやら髭を生やした男の人とぶつかった。
「む、すまん」
「こちらこそすまない」
不注意だった。
私は行こうとすると、腕を誰かにガシッと掴まれる。私は思わず引っ張られ、尻もちをついた。
後ろを振り返ると先ほどのおっさん。
「んだよ」
「竜人か、お前は……」
「だからなんだよ」
「失礼。同種の輩を久し振りにみたのでな。俺はアニガス。竜人だ」
プレイヤー、では無さそうだな。
NPCか。アニガスというNPCは私の腕を掴み何かを考えている。
「竜人特有の鱗はあるが竜に変化したことがない……。お前、竜に興味はないか?」
「興味? あるけどそれがどうしたんだよ」
「竜変化、知りたくないか? 今なら特別に教えてやろう」
「…‥マジで?」
おっさん、いきなりそんなこと言ってくるなんて少し怪しいな。
が、まあ教えてくれるってんなら教えてもらいたいが。
「いくらだよ。タダじゃねえんだろ」
「そうだな……。後払いでいいから1万グラン頂こう」
「ちっ……」
グリズリーの素材全部売ってちょうど1万グラン。
アイツらとスキルを買いに行く約束してんのに……。ここで無駄遣いするわけには。
だけど……。竜変化か。うーん。
「わかった」
「よし。では、そのスキルをまずやろう。今から少し謝らせてもらう」
そういうと、おっさんの手が竜のような手になった。ゴツくなり、鱗が生えてきて爪が太くなる。それはまるで竜の手。
その竜の手は私の頭に乗せられた。ガシッと竜の手で掴まれる。爪が頭に食い込んだ。
《竜覚醒しました》
《スキル:竜変化 を取得しました》
《スキル:シャインブレス を取得しました》
というアナウンスが聞こえた。
「っし、これで出来る様になっただろ。竜変化」
というので、私はおっさんのように手を変化させてみる。私の手が白い鱗が生えてくる。爪も太くなり、なんか物凄く強そう。
「竜変化は部分的にしかできない。一箇所だけだ。手だけなら手、脚だけなら脚、翼を生やしたら生やしてる間は他の部位を変化させられなくなる。それだけ覚えておけばいい」
「ほんとだ」
私は今度は脚を変化させてみた。どっしりとした竜の脚。動きやすくはあるが、脚は竜に変化させなくてもよさそうだ。
「それに、竜覚醒を行ったからブレスも吐けるようになってるはずだ。鱗の色からして光属性のブレスだろう」
「へえ。まあ、ここで試すわけにはいかねーか」
「そうだな。説明はこれだけで十分だろう。約束の1万グラン、頂くとしよう」
「ほら」
私はおっさんに1万グラン手渡した。
「俺はいつもこの街のホテルにいるから。強くなったらまた来い。今度は違うのを教えてやる」
「わかった。ありがとう」
アニガスのおっさんは翼をはやし飛んでいく。竜の翼だ。
私はスキルの説明を見てみる。竜変化で変化させた部位で攻撃すると元の攻撃力の2倍、威力が出るという。
そして、爪は剣のように斬撃属性が付与されているらしい。
そして、このスキルは変化させるときに魔力を使うらしい。ブレスも魔力を使うみたいだ。
人間の手から竜の手に変化させるときに魔力を使うが、元に戻す時は魔力が消費されないみたいだな。
「めっちゃ強力なスキルじゃねえか。竜人種が魔力の伸びが悪い事以外デメリットはそこまでねぇ」
それにしても竜覚醒、か。
竜人族だけにあるとは思えねえから他の種族もあるんだろう。エルフ覚醒とか。
「さて、アイツら待ってるし早く行くか」