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青春とは

 ログインすると、すでにアルテミスはログインしており、優雅にコーヒーを飲んでいた。


「やぁ、やっとログインしたようだね」

「おう。イベントよろしくな」

「二人一組ならば君たちの三人組は一人弾かれるからねぇ。仕方ないといえば仕方ないさ。まぁいい。今回はレースだろう?」

「みたいだな。いかに目的地まで早く辿り着けるか……らしいが。どう思うよ。こんなシンプルなの本当に面白いのか?」

「それは蓋を開けてみなければ分からない問題だねェ。まぁ、運営はなにか仕込んでいるとは思うね。その仕込みが何なのかは今の私たちには知る由もないさ。それよりどうだい? コーヒーは」

「もらう」


 私はコーヒーを受け取る。

 砂糖をたくさん入れた。


「君、そんなにいれるのかい?」

「今の気分はもっさり甘いのがいいんだよ。いつもこんなんじゃねえ」

「よかった。普段からそれだと糖尿を疑ってしまうよ」

「アルテミスはいれねえの?」

「私はブラックオンリーさ」


 ふーん。オトナだな。

 私はコーヒーを飲んでいると、宿の玄関の方からワグマたちが仲良く話しながら出ていく姿が見えた。

 デイズだけはこちらの視線に気づき、手を振ってくる。


「あいも変わらず仲だけはいいな。なんつーか、あれが本当の青春なんだろうな」

「君は青春してないと?」

「私はなんか一人だけホラーっていうかなんつーか。私の人生は青春に分類されるものじゃねえよ。今日も死にかけたし」

「……何があったんだい?」

「増水した川に落ちた」

「君つくづく運がないねぇ。ラプラスの言うオカルトも信じそうになるくらいだよ……」


 と呆れていた。

 マジで何なんだろうな。今年に入ってから碌なことねぇぞ。去年も去年で終わりかけに車に轢かれたりするし、今年は拳銃で目を撃たれて失くすし川に落ちるし。

 私だからまだ何とかなるが普通死ぬぞ。


「たしかにそんな殺伐とした人生は青春とは呼べないね。スパイスしかない」

「だろ?」

「そんな君だから、彼らが羨ましいのかい?」

「まぁ、そんなとこだよ。アルテミスだってそうだろ。お前もどちらかと言うと私側だ」

「私のことをよく理解している! そうだねぇ。彼ら彼女らのような人生でも面白かったなとは思う。私は賢すぎるからね」

「賢すぎるのも強すぎるのも考えもんだな」


 私ももし、グレてなくて喧嘩なんてしない普通の少女だったら。あんな風に何も考えずワグマたちと笑い合えていただろうか。

 そんな感情が少なからずアルテミスにもあるのだろう。アルテミスと私、波長が合うとは思っていたがこういうつながりか。似たもの同士という。


「彼ら彼女らにはまだ先があるが……。私たちは限度に近づいた感じがするからねェ。先が見えない、先がないというのはどうもつまらない」

「同感……」


 私は楽しそうに歩いて行く9人をゆっくりと見送る。


「何してるんですか?」

「おわっ! ピーチ、いたのか?」

「……あれ? 先ほど9人、行っていたはずでは?」

「ワグマ、オイリ、モンキッキ、キャツラ、ハーレー、ミナヅキ、デイズ、ラプラスにピーチ……。たしかに9人だったはずだ」

「ニセモノか?」

「ええ!? ニセモノって……。私さっきログインしたばっかりですよ!? 宿題とか色々終わらせてたらこんな時間になりまして……」

「じゃあ、ついていった一人は何だと言うのだい? ここからはまだ見える。君の目で確認したまえ」

「どれどれ……」


 と、双眼鏡を取り出していた。


「あれ、私? なんでいるの!?」

「あれ、ピーチだよな」

「だねェ」


 と、私たちも双眼鏡で観ながら話していると。

 そのピーチが振り向いた。こちらを見てニコっと笑う。


「気づいてる!?」

「馬鹿な、目視ではシルエットくらいしかわからない距離なはずだ」

「え?え? なに!? ホラー!?」


 その時だった。

 そのピーチがぼふんと煙を上げる。姿を現したのは一匹の猿だった。

 ワグマたちも驚いている。


「あ、あぁ、猿が変身していたようだね」

「なんか嫌なんですけど……」

「ニセモノと分かってよかったな。またドッペルゲンガーとかだったら困るぞ」

「まぁそうですけどね……」


 猿も人に化ける、か。








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変態、ゲームに立つ!
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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