家に帰ろう
ケーキをごちそうになり、私は家に帰ることにした。
クソ、情けねえ。こんな感じで迷惑をかけちまうとは。というか、本当に今年は何度も死にかける。いや、たしかに恨みはものすごく買ってるけどよ。
私はそんな風に考えながらも家に帰ったのだった。
阿久津家の庭は庭師によって手入れされており、いつ見てもやはり整っている。その庭先で、なにか月能が衣織となにか遊んでいるようだった。
声をかけようか? いや、楽しそうにしてんのに私が声をかけるってのもアレか。私は無視していこうとすると、月能と目が合った。
「あ、やっと帰ってきましたね」
「あ、おう」
「……行く時と服装変わってませんか?」
「あー、ちょっと川に落ちてな」
「川に!? え、昨日雨で増水してましたよね? よく無事で……」
「また死にかけたの!? 花音、本当にお祓いいったら?」
「いいよ。呪いとか信じてねえし」
「一応いっておきましょう。じゃないと本当に死にそうです」
「……わあったよ」
お祓いねぇ。行っても効果はほとんどねえと思うけど。
私はとりあえず中に荷物を置いてくると伝えると、二人も遊ぶのを切り上げて中に入ってきたのだった。
「外で遊ぶんなら遊んできていいぞ。私は見てるから」
「遊ぶんならかのちんもいなきゃだめなのー!」
「そうですね。あとそれと……。昨日はすいませんでした」
「気にすんな。アルテミスが私の言いたいことを言ってくれたしもう気にしてねえよ」
「なになに、喧嘩でもしたの? じゃ、仲直り!」
「……お前はずいぶんとハッピーな奴だな」
「こういう性格には救われますね」
「ふぇ? もしかしてけなされてる?」
もしかしなくてもけなしてる。
「で、かのちん。そっちの箱なに?」
「ん? ああ、桃の家でもらったんだよ。うちのかあさんの姉……アレクシアさんがな。ケーキ屋で月能と一緒にということで二つもらったんだが……。やるよ」
「いいんですか? 花音、甘いもの好きなのに」
「私は食べてきたからな……。どうしてもっていうなら半分もらってやってもいいぞ」
「ショートケーキとチョコムースケーキかー! どっちもおいしそー!」
と、中を見てよだれを垂らしている衣織。
たしかにおいしかった。私があっちで食べたのはモンブランだが、栗の味とかがものすごく味わえておいしかった。
「あ、そうだ。花音が来てから言おうと思っていたことがあるのですが」
「なんだ?」
「運営から次のイベントのことが発表されたんですよ。次は二人一組で参加する競争イベントみたいです。今いる世界とは違うイベント用に作られた世界に転移してイベントを行うみたいですよ」
「ふぅん。参加すんの?」
「私たちは二人で。さすがにここで花音と組むのは違うと思いましたから」
「……そうか」
「寂しそうな顔しないでください。別にあなたが嫌だからというわけじゃありません」
それは知ってる。
「じゃ、私はアルテミスとかねぇ」
「だと思いまして、一応アルテミスには言っておきました。快くオーケーしてましたよ」
「そうか。あいつがいりゃ百人力だしな」
あいつは頭脳担当だ。




