鬼
あの鬼に追いかけられながら一時間が経った。未だに脱出できる術は見つからず。
鬼が後ろにいる緊迫感と、いつ死ぬかわからないという恐怖感が私たちを襲う。
「なぁ、ここさっきも通んなかった? 見覚えある気がするんだけど……」
「ですね……。同じところに出てしまいました。オイリ、マッピングでは?」
「同じぐるって回った感じ……。大体埋まってきてるけど……」
あらかた歩き終わり、行ってない場所も無くなってきていた。
階段が見つからず、嫌な思いが頭に浮かぶ。
「もしかして……出られないんじゃないですかね」
「かもな」
「あの最初の部屋に戻ってみます?」
「そうしてみよう。そこは探索してないからな……」
と、戻ってみようとしたが、その部屋の前には何やらもう一体の鬼がいた。
後ろには鬼、前にも鬼。挟まれてしまったのだった。
「ワグマ、どうするよこれ!」
「死ぬか……たたかうしかないんじゃないでしょうか」
「だろうね! でも、勝てる? ゼーレいないんだよ?」
「やってみるしかないっしょ!」
オイリたちは武器を構えた。
そして、目があった鬼に向かって攻撃を仕掛けに向かう。オイリが攻撃を受け止めようとガードしていたが、鬼の攻撃はものすごく強く、一撃でオイリが沈められた。
「おいおい、オイリって戦士職だし俺らより防御高いよな?」
「一撃……!? 流石にやりすぎじゃ……」
「おわっ!」
と、忘れていた背後の鬼。
背後の鬼はぶっとい斧でハーレーを切り裂いた。ハーレーも死亡し、消えていく。
私とミナヅキだけが取り残されてしまった。互いに背中合わせになりながら、鬼を見張る。
「なぁ、こっからどうやって逃げる?」
「逃げ道、あると思いますか?」
「ない、ね。ただ、鬼にはダメージが通るみたいだし倒せたらワンチャンって感じかな」
「どうやってダメージを与え続けるつもりですか?」
「僕は狩人だ。背中合わせになってたらあいつらは近づいてこない。ここでちまちま削るしかない」
「運営はそういうことも予測して何か手を打ってそうなものですが……」
こういう致命的な弱点をわざわざ作るだろうか。
いや、しない。簡単に倒されてしまったら面白くないはずだ。
だとすると、こういう背中合わせをした敵に対して何かしてくるはず。
その時だった。天井から蜘蛛のようなものがダランとぶら下がりながら落ちてきた。
「きゃあ!?」
「蜘蛛!?」
「毒蜘蛛です……。しかも強力な……。ど、毒が……!」
「なるほど、ちまちま削るのも許してくれないわけだ」
毒蜘蛛が放たれるなんて聞いてない。
毒で体力がどんどん削られていく。そして、そのまま、私は毒で力尽きてしまったのだった。
このダンジョン……難しすぎ……。と、真っ暗になろうとした時、急に意識が鮮明になる。
「……え?」
「持っててよかったぜ、蘇生薬。あれを倒しゃいいんだな、ワグマ」
「ぜ、ゼーレ?」
「なぜここに? 上で待機って……」
「まさか、ニセモノ?」
「なわけねえだろ。なんとなく、困ってるかと思ってよ。私も落ちてきたんだよ。鬼一体はやったからあと一体ぶちのめしゃいいんだな」
と、ゼーレが鬼めがけて走って攻撃していた。
鬼は一撃で倒れていたのだった。な、なんで私たちの苦労がこんなゼーレに……。ゼーレはやっぱり強い。羨ましいほどに。
「っし、なんか落としたぞ。巻物?」
「脱出方法って書かれてるね……」
「……最初の部屋で10分間待機していると上から糸が降りてくる。この迷路はなんも関係ないんですね」
「なら待ってようぜ」
私たちは最初の部屋に戻ったのだった。
戻る途中、私はポコポコとゼーレの背中を殴っておいた。




