カイゼルとエンプレス
私たちは探索を続けていると。
目の前に何かがいる。草をむしゃむしゃと食べているのは馬のようなもの。ただ、翼が生えている。
「ペガサス……?」
「ほほう? ペガサスだねぇ。ペガサスの群れのようだ」
「可愛いー!」
と、ピーチが近づいていった。
ペガサスはこちらの様子に気づいたのか、少し警戒しながらもピーチが近寄るのを待っていた。
ピーチは首筋に手を振れる。
「よしよし、怖くないよ」
と、一頭の首すじを撫でる。
ペガサスは嬉しそうにぶるるんと息をしている。手懐けた。すげえ。
ピーチは背中によっと跨るとペガサスはいなないて、走り出す。
「あはは、はやーい!」
鞍もつけず、ただペガサスにがしっと捕まってるピーチ。
「彼女は動物を手懐けることができるみたいだねェ。私は動物に怖がられて犬すら撫でたことがないのにねェ」
「んー、私もねえな」
「彼女の優しさが動物にも分かるんだろう。興味深いね」
現にあのピーチが近寄れても私たちは近寄れないからな。少し詰め寄るとその分一歩下がってしまう。
馬という生き物は警戒心が高いとは聞いているが、馬でなくても警戒されるからな私は。
「ペガサスちゃん。私をいつでも乗せてよ」
「ヒヒンッ!」
「いいの? ありがとー! じゃあ名前はねー、ピーチク! 君はピーチクだ! よろしくね、ピーチク!」
と、名前を決めてテイムしたようだ。
ピーチクはピーチを乗せてこちらにやってくる。
「テイムしたよ!」
「おう。すげえな」
「私たちは警戒されて近づけないからねェ。羨ましい限りさ」
「二人ともオーラすごいもんね……」
むしろ無警戒で近づけるピーチの方がすごいのでは。
「天馬がいれば私たちの移動も楽になるだろうが……。まず、そのピーチクとやらに乗る準備をすべきではないかな? 鞍や手綱は必要だろう」
「それは村にねえか? てか、ペガサスって移動手段はやっぱ私たちもいるよな」
「そうだねぇ。空を飛べて陸も走れるとなると便利だ」
そういうと、ピーチクがいななく。
「ついてこいって言ってるみたい」
と、そういってピーチクは歩き出したのだった。
少し歩いた先にいたのは、ピーチクのような白馬ではなく、真っ黒。黒い馬が木に齧りついている。
隣には、純白で汚れのない白馬がいて、そちらにはピーチクたちにはないツノが生えていた。
「ぶるるん」
「二人ならテイムできるだろう、テイムしてみな、だって」
「アレを?」
「私は純白のツノがある天馬をテイムしてみるとしよう。ガタイのいい黒馬はゼーレ君がテイムしたまえ」
「……わあったよ」
ということで、私たちはその二頭に近づく。
その馬は私たちの存在に気づいているようで、齧りつくのをやめてじっとこちらを見ている。
すると、のそのそとこちらに近寄ってきた。ぶるるん、といななき、首を私に巻き付けてくる。
《カイゼルペガサス をテイムできます》
《テイムしますか?》
という言葉が聞こえてきたので私はテイムするを選択した。
名前を決めてくださいというので、私は考えてみる。ものすごく強そうなペガサス。そうだな……。
「お前はカイゼルだ」
「おや、テイムできたようだね。私も今できたとこさ」
「ヒヒンっ」
と、ペロペロ顔を舐められている。
「名前は?」
「エンプレスペガサスって名前だったからね。安直だがエンプと呼ぶことにしたよ」
「ヒヒン」
「そうか。お互い、強そうなの手に入れたな」
と、カイゼルが私の服に甘噛み。
乗ってくれと言わんばかりだった。私は背中に跨り、ガシッと捕まると、カイゼルは空を飛ぶ。
空を走っているのを知って、ものすごくテンションが上がってきた。
「こういうのだよな、ファンタジーってのは」
ファンタジー最高!