飛行船の材料
左目が見えるって今となっては新鮮だな。
私はニライカでキャツラの案内のもと、その飛行船の人のところに向かった。
ドワーフのおじさんで、ハンモックに揺られている。
「おじさーん、前の飛行船のお話聞きたいんですぅ」
「受けてくれるのか!?」
「はい! 私たち、ヘヴンレイに行きたいので協力させていただきまーす!」
「そうかそうか! まぁ、必要なのは素材だ! まずは頑丈な木材! そうだな……。ドゥメル辺境伯の領地のシラシカバの木が一番だろう。そして、布。布にはこだわりがあってな。キングモスの繭から取れる糸を使っている。シラシカバの木材が……50、キングモスの糸が80あれば飛行船はできる! 頼んだぞ!」
《クエスト:飛行船製作の材料集め を受注しました》
ということで、素材集め開始。
私はとりあえず宿屋に待っているワグマたちに伝えたのだった。
「キングモスの生息地はどこだ?」
「たしかドレッドレス森林だったはずさ。ただ……キングモスは魔物だからね。戦える人物がいったほうが良いだろう」
「となると、ゼーレなのですが……」
「ゼーレはいけないよねー」
私が苦手とするものを二人は分かっているからな。
「どうしてだい?」
「ゼーレ、蛾は苦手なんですよ。気持ち悪いということで」
「モスって蛾でしょー? ゼーレ無理無理!」
「へぇ、意外な弱点だね。だったらゼーレ君はシラシカバのほうか。そちらは雪国だと聞くよ。暖かい格好して行った方が良いだろうね」
申し訳ないな。蛾だけはダメなんだ。夏の夜とかは基本出歩かないのは蛾のせい。
コンビニとかの誘導灯に引き寄せられてるの見てうわぁってなる。
「では……。キングモスのほうには誰が向かおうか。ここにいないメンバーにさせるかい?」
「となるとモンキッキ、デイズ、ハーレーですか」
「不安があるとすれば、インベントリの容量ね……。キングモスの糸は80個必要なのでしょう……。となると、三人じゃ持ちきれないんじゃないかしら……ククク……」
「なので、もう少しメンバーが欲しいところだね。私としてはラプラス、君に向かって欲しいものだが」
「あんたの指示なんて受けないわ」
「ラプラス、頼めますか?」
「いいわよ。キングモスね……」
こいつ本当難儀な性格してるよな。
私たちが話し合っていると、部屋の扉が開かれる。
「ごめーん! ワグマちゃん、遅くなっちゃった!」
と、ピーチがやっと来たのだった。
「…‥誰よ」
「ああ、新たにメンバーにすることになったピーチです。少々現実世界でありまして。友人になりました」
「初めまして! ピーチっていいます! よろしくお願いします!」
「……イロモノじゃない子初めてだよね」
「ミナヅキ君。それは私たちがイロモノとでも言いたいのかい? まぁ、否定はできないが人に言われるとねェ」
「心外よ」
「よろしくお願いします! みなさん!」
「ああ。よろしく頼むよ。私は病室で自己紹介したね。アルテミスだ」
「ラプラス。ククク……。あなた、すごいいい守護霊に憑かれてるわね」
「……ふぇ?」
さっそくイロモノがやり始めたぞ。
「僕はミナヅキ。よろしく」
と、ミナヅキが手を差し出すが、ピーチはその手を取ろうとしない。
「わり、こいつ男が苦手みたいでさ」
「男になにか因縁があるのかい?」
「……その、以前男の人に襲われて、その、失いかけてそれからトラウマが」
「なら仕方ないね。僕も気軽に近づくことはしないようにしよう。他の男の人にも言っておこうか」
「頼めるか?」
「いいよ。襲われそうになったらやっぱ嫌になるもんな。女嫌いだけど気持ちはわかるよ僕も」
「お前はウザいから嫌いってだけだろ……。シンパシー感じんな」
「はっはっはっ。僕の方は事態はそこまで深くないしね」
こいつ……。
「まぁ、男女比率は女性の方が圧倒的に多いから気にすんな。男は3人しかいねえ」
「は、はい!」
「じゃ、改めてピーチも私たちの計画に加えるか。ピーチは木か虫どっちがいい?」
「え? あ、木?」
「じゃあシラシカバだな」
私と同行か。
「じゃー私もシラシカバにするー! たまにはゼーレと行動したい!」
「では、私はモスですね」
「僕もモスにしようか」
「では、私はシラシカバだ。ラプラスくんは私と行きたくないだろうからねェ」
「ふん」
と、行くメンバーが決まった。
私とアルテミス、オイリ、ピーチがシラシカバ。それ以外は全員モス。
まぁ、モスはバトルになる可能性が高いからね。本来私が行くべきなんだが、苦手なもんはしょうがない。
「じゃ、行こうぜシラシカバ班」
「待って、リーダー決めよ!」
「お前でいいよ」
「私そういうの無理だからー!」
「お前、クランのサブリーダーだろうが……」
無理じゃねえだろ。
「てかお前、サブは進んで立候補したじゃねえか」
「だってぇ、ワグマ見てたら私にあんなの無理だってわかるもん」
「別にアレがおかしいだけだろ。お前はお前でリーダーに向いてると思うぜ。リーダーは雰囲気作りも大事だからな」
「そーお? じゃあ、私リーダー! サブはー、ゼーレ?」
「パス。ピーチな」
「えっ!? 私ですか?」
「私、人の上に立つのは慣れてねェ。使うより使われる方が気が楽だ」
「ふむ、私も統率者には向いてないからねェ。消去法でも君になるよ」
「そっか。じゃ、私がサブリーダーです! よろしくね、みんな!」
桃色髪のピーチが元気よく請け負ったのだった。
さ、目指すは雪国。レッツラ
「ゼーレ? アレってなんですか? アレって」
「……聞いてたのん?」
「ばっちり。アレ呼ばわりは心外ですね」
「ちょ、怒らないで。まじやめて。てか、お前だって私のことアレ呼ばわりしてるだろ!」
「あら、そうですね。ならおあいこってことで」
「お前わざとやってねえか?」
と、おほほと笑いながら自分のところに戻って行った。
「ピーチ、いいこと教えてやる。あいつは絶対怒らせるなよ」
「怒らせるようなことしなきゃ怒んないよ」
「き、肝に銘じておきます」