転校生
放課後。
昨日は一人でニライカに行って釣りして終わった。私たちはC組にいる衣織を迎えにいくと、衣織が誰かと話している様子が見えた。私は声をかけようとすると、月能に頭を押さえつけられる。
「誰かと話してるみたいです。楽しそうに……」
「んだよ。そりゃC組に友達だってできんだろ衣織に」
「そうなのですが、あの女性、見たことないんですよね。新入生なわけないですし……。それに、あんな親しくしてるのは見たことないです」
「あぁ? あいつコミュ力高えしいつもあんなんだろ」
「そうなんですが……。でも、衣織、なんか変じゃないですか?」
変って言われてもわかんねぇよ。
月能は教室内の衣織の様子をじーっと眺めていると、衣織がこちらに気づいた。
おーい!と手を振ってくる。
「ほら、呼んでるぞ。いこうぜ」
「そうですね」
「いでっ!」
月能は私の頭を押した。扉に頭をぶつける。あの野郎……。
私は頭を押さえながら衣織の元に向かう。
「押さえつけた挙句突き飛ばしやがって……。なんか恨みでもあんのかテメェ」
「軽い遊びです。それより衣織。この方は?」
「あ、しょーかいするね! この女の子はてんこーせーの緒方 桃!」
「桃って呼んでくださいね」
と、ニコッと笑う。
足の方を見ると、スカートがものすごく長かった。風で靡いたその瞬間、痣のようなものが見える。
「ちょっと失礼」
私はスカートを捲る。
「きゃっ!」
「何してるんですか?」
足を見る。
この痣……。病気とかそういうもんじゃねえな。殴られてる痣だ。
それに、これは火傷……。根性焼きの跡。
「お前、家で虐待とかされてんのか?」
「は?」
「え、えっと、家ではされてません……」
「ふーん、じゃあどっかで殴られてんのかテメェ」
「どういうことですか、花音」
「殴られた痣がある。それに、タバコを押し付けられた跡……。こういうことすんのって昔のような不良か、虐待する親だけだぜ。しかも最近につけられてる。痛えだろこれ」
「……はい」
こういうことする奴、今でもいるのか。
「その痣のことで相談受けてたんだよー。なんか不良集団に目ぇつけられちゃったんだって。強姦されそうになって抵抗したら相手が怪我おっちゃって逆恨みされてるって」
「……へぇ」
「この学校に来たのは有名な不良に手を貸して欲しいってことらしーよ」
「花音……」
「人助けだ。いいだろ?」
「……仕方ないですね。バレないように工作はしておきますから。とりあえず地元ではダメですよ」
月能の許可もーらい。
喧嘩だ。
「えっと、花音さん? 花音さんが戦うんですか?」
「そーだよ! なんてったって花音がかの有名な死神だからね!」
「えぇ!? 私はてっきり男の人、かと」
「男の人だったらどうやって頼んでたの桃。男嫌いなのに」
「……まぁ、トラウマなのでしょうね。今からやりましょうか。善は急げですから」
「そうだな。ま、制服はやめておこう。見られたらまずい。月能、服を持って来させろ」
「わかりました」
喧嘩の依頼が来ちゃ受けるしかねぇな。