夜
火山が噴火した。
煮えたぎるマグマが山頂から湧き出し、じわじわと山を下ってくる。
そして、何より問題なのは。
「火山弾に気をつけるのだ当たったらタダでは済まないぞ!」
「分かってるぜ! とりあえず急いで下山を……」
「ダメだ。私たちの目的はすぐそこに……」
「そう言ってる場合じゃねェだろ! それはまだ後でいい! 今すぐ……」
「いや、今でなければいけない気がするのだ」
と、ユズリハは黒曜ゴーレムが守っていた洞窟の中に入っていく。
Xの制止も効かず独断で。
「おい、コスモス! あいつ行っちまったぞ!」
「……仕方ない。X、貴様は下山していろ。私はユズリハの後を追う」
と、コスモスも洞窟の中に入っていく。
「なんで避難しねえんだ……! 敵とかならまだしも自然様には誰も敵わねえってのに……! ゼーレさん、いきやしょう! ここにいたら……」
「……なぁ、このマグマ、少しでも堰き止められたりしねえかな」
「はァ? 何言って……」
「無理だよな」
時間稼ぎになればと思ったが。
「ユズリハたちが覚悟決めて行ってんのに、私が逃げるってのはダセェと思って何かしようと思ったんだが」
「…………」
「なぁ、X。お前も行かなくていいのか?」
「……ちっ、わあったよ。俺もいく」
「そうか。じゃあいけよ」
と、Xはユズリハの後を追い、洞窟に入っていった。
出られなくなる前に出てきて欲しいが、流石に難しい。流れてくるマグマを止める術がない。
私に出来ることは固まったマグマを砕くこと、だがしかし、ここの火山はマグマが固まらないという情報があった。
「……黄泉の力とかでなんとかならねえか!」
私の目の前にはマグマが。
ああ、これはもう無理だ。私は逃げるしかない。私は背を向けようとするが、身体が動かない。
本能で、動くなと言っているような気がした。死ぬ覚悟を決めろ、ということだろうか。
しょうがねえ。焚き付けたんだ。私も死んでやる。
「こい、マグマ!」
私の体はマグマに飲まれようとした、その時だった。
《三日月龍の加護の条件が満たされました》
《三日月龍の加護と星の夢が反応しました》
《種族が変化します》
《三日月龍の力と常世の力が合わさりました》
《種族:夜龍 となりました》
《夜龍専用スキル:夜の帷 を取得しました》
《夜の帷を使用しますか?》
というアナウンスが流れる。私は夜の帷を使ってみた。すると、マグマが固まっていく。
冷えている? マグマが冷え固まり、手で触ってもダメージがない。どういうことだ?
「夜の帷……。周囲に黄泉の冷気を放ち、50%の確率で相手を氷状態にする……。マグマを冷やして渡ることも可能……」
なにこのちょうどいいタイミングに。というか、条件?
私は夜龍の説明を見てみる。
「星の夢、常世の力、三日月龍の加護が合わさった龍。夜の支配者とも呼ばれる……。手に入れる条件とかねえのかよ」
私は説明文を見続けて下にスクロールすると条件が書いてあった。
・現実世界で三日月の日の夜(午後5時以降)にログインすること
・常世に行ったことがあること
・星の夢というレアアイテムを所持していること
・元の種族が竜人族であること
というものだった。
たしかに常世行った後、三日月の日にログインした記憶がない。今の今まで条件を満たしていなかったのか。
それが今たまたま偶然、満たしたからこうなったと。運いいな……。
「マグマも固まったし、あとはあいつらを待つだけか」
マグマの心配もないしゆったり探索してこい。