戦闘兵器彼女
上級職はなかなかなれるもんではない。
色々とクエストを受けまくってはいるが、そう言った話は手に入れることができなかった。
「そんな簡単になれるもんじゃねえよなぁ」
私はとりあえず寄り道をしてスキル販売店にいた。
金もあるし、いいスキルあったら買おうかと思ってきたわけだが、何やら面白そうなものが置いてあった。
「ランダムスキル……?」
カウンターにそういうものが置いてあった。
何が手に入るかわからないもの。食べてみるまでわからないが、そこまでいいスキルはないみたいだ。
まぁ、一つ買ってみるか。
「おっちゃん、一つくれ、これ」
「あいよー。3万グランね」
と、一口購入してしまったランダムスキルの種。私はとりあえず食べてみる。
カリッとカリカリ梅のような食感で、味はというと少し辛い。だが、激辛というわけではなくほんのり辛いかな?って程度。
《スキル:トゲトゲ武装 を取得しました》
なんだトゲトゲ武装って。
調べてみると、指定した場所に棘を生やすのだという。棘は攻撃した相手に追加でダメージを与えるものだとか。
棘のダメージは固定らしいので、どんだけステータスが上がろうと棘のダメージは一定。
試しに使用してみると私の手がトゲトゲになった。
「ウニみてえ」
これで殴ったら超痛そう。
そして、トゲトゲは触れた相手にダメージなのでもちろん防御する際にも使えるようだ。
黄金武装にトゲトゲ武装……。武装系のスキル多いな。
「ってそうじゃねえ。当初の目的忘れてた」
武闘家の上級職探しだ。
つっても見当がつかない。聞いときゃよかったかな。なんて思いつつ、私は奔走していた。
私は王都の路地裏に入って、そういう人がいないかを探していると、突然目の前に男女二人組が現れた。
プレイヤーっていうわけではなく、二人は手にナイフを所持している。
「なんだお前ら。金目的か?」
「違う! 俺らは掃除屋見習いのクダン兄妹だ! お前、カルマを感じるぞ! 掃除屋の名において成敗いたーす!」
と襲いかかってくる。
カルマ値? 最近はPKしてねえから溜まってないはずなんだが。
私はとりあえず攻撃を交わし続ける。無闇に手を出したらなんかまずい気がして。
「はっ! 避けるな!」
「いや、避けるだろ」
「くそ、お前を討伐しないと俺らは掃除屋になれない!」
「知るかよ……」
と、その時妹が距離を詰めて私の足を掴む。
「よくやったクタン!」
「早くお兄ちゃん!」
「うおおおお!」
と、ナイフを突き刺そうとしてくる男の子。真剣白刃取り……?いや、ここはしょうがねえ。手を出すしかねえか。
私は拳を握りしめると、誰かが私の前に割って入る。
「やめろ。クダンとクタン」
と、忍者の格好の女の子。センゴクって名前だったかが割って入る。
私の拳を受け止め、クダンとクタンのナイフを受け止めていた。
「悔い改めたようで何よりだ、ゼーレ殿」
「そりゃな……。あんたと戦うのめんどくせえし」
「隊長! 邪魔しないでくださいよ! 俺らそいつを討伐しなくては!」
「やめんか! バカども!」
と、大声を放ったのは背後にいた大柄の男。鬼の金棒のような武器を持っていた。
私はとりあえず拳をおろす。
「すまなかった。君は確かに罪を犯していたが、悔いているのがわかる。悔いたものには罰を与えない。それが我々の鉄則だ」
「それを守らぬとは! このことは後で処罰する!」
と、目の前で説教が始まっていた。
センゴクは私の攻撃を受け止めた右手をものすごく痛そうに庇っている。そりゃ力強いからな。
「改めて、申し訳ない。俺は掃除屋の首領のタイショーだ」
「あ、ゼーレっす」
「ゼーレ殿。君のことは聞いているぞ。あのセンゴクを追いやったのだろう?」
「あ、はい」
「どうだ? 俺が提案する職業になってみねえか?」
という誘いだった。
「いいっすけど、職業?」
「ああ。レベルは1に戻るが、いい職業だ。名前は……戦闘兵器」
「それ職業名なんすか?」
「ああ。この職業はものすごく強い人しかさせないと思っていてな。君はその条件に合う」
「……まぁ、いいっすけど」
「そうか。なら、これを授けよう」
と、戦闘兵器となるための職業の書だった。これを使用すればなれるらしい。
レベルは同じ系統の上級職ではないために1に戻るが、ステータスアップするのが素早さ、攻撃、魔法攻撃と攻撃全振りの職業。そして、専用スキルがあるらしい。
「君がそれになるのなら私たちもたまに君のクランに依頼をさせてもらうときがあるかもしれない」
「りょーかいっす」
「どうやら、なるようだね?」
「もちろん」
戦闘兵器って聞くとワクワクするのは私が戦闘狂だからだろう。
私は、職業の書を使った。
《職業:戦闘兵器 になりました》
《レベルが1になりました》
《前の職業のステータスが引き継がれます》
《スキル:バトルモード を取得しました》