ドッペルゲンガー
シャドウ化ってさっき話していたもの、だよな。
一部のステータスが極端に上がって暴走するやつ。もしかしてそれか?
私はとりあえず効果を見てみる。
「大丈夫ですか? ゼーレ。影に包まれてますが……」
「あー、大丈夫みたいだ」
どうやら人間側では違うらしい。
黄金武装のように影で武装するという感じで、物理攻撃なのに魔法攻撃というようになるらしい。
全身をシャドウで覆うこと……影の人間になることは可能だが、攻撃を魔法扱いにするというのは変わらないみたい。
「新たなスキルをゲット……」
と話していた時だった。
浜辺の方から弓矢が飛んできた。その弓矢は私と同じ影に染まっている。
「なんだ?」
「あちらに何かおりますわ?」
浜辺の方をみる。
砂浜には黒い人影が弓矢を構えて立っていた。
「鑑定してみます」
と、ワグマが鑑定するようだ。
「アレは魔物で、プレイヤー:アズマのドッペルゲンガー……みたいですね」
「ドッペルゲンガー?」
「えーと、シャドウ化スキルを手に入れたプレイヤーのドッペルゲンガーが一体ずつ世界どこかに現れたみたいです」
「倒さないといけないのかなー?」
「ドッペルゲンガーと元になったプレイヤーが出会うと強制的にキルという扱いになるようなので、倒しておいた方が人助けにはなりますね」
「……なんと言ったかな? 強制的にキルだって?」
と、アルテミスが聞き返していた。
「はい。それが何か?」
「もしかしてゼーレ君、君のそれはシャドウ化ではないだろうか」
「そうだけど」
「ならば大問題じゃないか? ゼーレ君はものすごく強いんだろう? ならば影も比例して強いはず。その強い影、誰が倒すというんだい?」
「そりゃゼーレでしょ?」
「それができない! ゼーレ君は自分の影に会うと死亡する」
「……なんでシャドウ化したんですか?」
「私に聞くなよ」
コンピュータが適当に選んだんだろ。
「世界のどこかで私の影が暴れて手をつけられないのか」
「ゼーレはどうすることもできない……。私たちで勝てますかね?」
「うーむ。厳しいだろうな。私以外際立った戦力がいねえ。ハーレー、デイズがいればまだなんとかなったが……」
「引き返しましょう、フロルアージュ」
「そうしましょう〜。ですが、あのアズマさんのドッペルゲンガーはどうするのですか〜?」
「……倒すしかないだろう。あの影、私たちを逃すつもりはなさそうだ」
影はフワッと浮いて船に近づいてくる。
近づきながらも矢を放ってきた。私は手をシャドウ化させ、ドッペルゲンガーめがけて飛ぶ。私めがけて矢が放たれるが、私は矢をキャッチして一発ぶん殴った。
「アズマってやつの職業は狩人っぽいから、一撃で死ぬだろ」
私はそのまま海にダイブ。海面から顔を出した。
アズマのドッペルゲンガーはいなくなっており、ドロップアイテムが転がっている。
どうやら倒せたようだ。
私は船の方を振り返る。すると、私の視界が暗転してしまう。
そして、気がついたのは王都にある拠点だった。なぜかステータスが半分になっている。デスペナルティというやつだろうか。
「私死んだ? なんで死んだんだ?」
話していると、ワグマとアルテミス、オイリが部屋から出てきた。
「どうした? お前らも死んだのか?」
「当たり前です。あなたのドッペルゲンガーがいきなり船の上に現れたんですよ?」
「なすすべもなかったねー」
「私も対抗こそしていたけれどねェ。力及ばず。フロルアージュともどもキルされてしまったさ。だがしかし、ドッペルゲンガーはいつどこにでも現れることが出来るのではないかという仮説も立てることができた」
「その仮説はきっと正しいですよ。それにしても……運が悪いですね。ゼーレ、あなたが引き寄せたのでは?」
「知らねえよ。やっぱ私呪われてんのかね」
この前は傷害事件の現場に出くわすし、ひったくりの現場にも出くわすし、なにか呪いがかけられてんじゃねえかと思う。