人間ロケット
ムキムキとなった男の頭に鉄球をぶつけた。
男は吹き飛ばされ、木々がへし折れていく。
「この……なぜ私の邪魔をする! 呪われし竜の人よ!」
「お前の顔が気に食わない」
「そんなくだらない理由で……ッ!」、
と、逆上して殴りかかってくる。
私はかわしてアッパーを食らわせた。上空に殴り飛ばされる男。
私は大地を強く蹴り飛び上がる。そして、そのまま踵落とし。大地に強く打ち付けられた男は血を吐き、どんどん筋肉が萎んでいった。
「私の計画が、私の野望が……」
「どういう野望か知らねえけど、残念だったな。こっから逃げるか、死ぬかどっちがいい? 今なら選ばせてやるぜ」
「クソっ! クソがっ! 一時撤退!」
と、煙玉を投げる男。煙が晴れると男は既に居なくなっていたのだった。
ひとまずは終わった。一体なんだかわからないまま戦ってたけど……。しょうがねえ。アルテミスのとこ戻るか。
アルテミスのところに戻ると、アルテミスはカイザーと共にマンモスの治療をしていた。
「すまないね。君にどんな事情があるかは私たちには知らないが、今後は襲わないでくれると助かるよ」
「パオォン……」
「流石の巨体だ。包帯全部使い切ってしまってなおケガのところが塞がらん。しばらくはこれで我慢するしかないだろうねェ」
「パオォン……。パオ」
《始祖獣:ガイアマンモス からスキルが与えられました》
《スキル:アイアスの盾 を取得しました》
アイアスの盾?
スキルの効果は自分の周囲にバリアを張るというもの。ただ、並大抵の攻撃では壊れないバリアらしい。
壊す、無くすにはもう一度スキルを唱えるか、10万ダメージを一気に与えるということ。
「へぇ、いいスキルじゃん」
「君ももらったのかい? ダモクレスの剣というスキルを」
「私はアイアスの盾だ。バリアを張るスキルだってよ」
「へぇ。私とゼーレ君で違うものなのかい。私は天から無数の剣を落として攻撃する範囲魔法らしい。私としては攻撃手段が増えて嬉しい限りだよ」
「そうだな。爆弾だけじゃちょっと心許ないもんな」
お互い強力なスキルを貰ったようだ。
だがしかし、さっきのアナウンスで気になることもある。
「始祖獣ってなんだ?」
「ふむ、言葉から察するにはじまりの獣……。考察するならば、世界を作った獣ということだろうか」
「あー、始まる祖で始祖か」
紫蘇かと思ったが、これだとなんかアレだよな。
私たちは始祖獣について話しているとフレンドメッセージが届く。ワグマからだった。
「何かあったんですかだと。さすがにそろそろいくべきか?」
「私たちにとってこの島はもう要はないからねェ。ただ、三人にはまだ未知の地であるから暫く滞在することになりそうだ」
「ってか、ここがどこかわかってねえしな。どっちいったら船があるのか」
「その問題もあるね」
船の位置がわからない。
そう思っているとマンモスが鼻でちょんちょんと肩叩いてくる。
「なんだ?」
「パオ」
鼻を張り上げ、ゆっくり下ろす。
「……もしかして鼻の中に入れと言ってるんではないか?」
「鼻の中にィ?」
鼻をゆっくり下げて鼻の穴を広げるマンモス。私たちは恐る恐る中に入る。
すると、鼻の穴にすっぽりハマり、そして、私たちの体が宙に浮いた。
「まじか!? なんか察したぞ!?」
「はっはっはっ! 実に愉快だねェ!」
「笑ってる場合じゃねえよ! 私たちサーカス団じゃねえんだぞ!」
「まぁ、マンモスが飛ばしてくれないと私たちも道がわからないんだ。受け入れる他ないだろうね」
なんだか空気が溜まっていってるような気がする。
そして、その時はやってきた。下の方から強い風が吹いたかと思うと、すぽんと私たちの体が鼻の穴から抜けて、宙を飛ぶ。というか、吹き飛ばされている。
「やな感じ〜! とでも言っておこうか」
「やな感じ〜!! って言ってる場合じゃねえよ! 着地どうすんだこれ! 落下ダメージで死ぬぞ!」
「マンモスを信じる他ないだろうねェ」
宙に飛ばされる私たち。
海は見えるし、船も見える。が、私たちの高さは船が小さく見えるほど高く飛んでいた。
そして、最高点に達したのか、私たちの体は。
「落ちていくぅ!」
「はっはっはっ! パラシュートなしのスカイダイビングとはまた面白いねェ! リアルでは間違いなくあの世行きのダイビングだろう!」
「私たちマジでどこに落ちるんだ? 海でも落下ダメージは受けないか? 水面に叩きつけられたらやっぱ痛いわけだし」
「それについては前に検証したよ。水面だと落下ダメージはないようだ」
「なら水面に落ちることを祈るしかねえな!」
南無阿弥陀仏。