無数の手
船に揺られること数時間。
島のようなものが見えてきた。人が住んでいる気配はない。だがしかし、そのまま上陸していいのかと考えると少し嫌な予感がある。
「だれか先に上陸してこいよ」
「小舟も積んでありますわ〜。誰が行くんですの〜?」
「ふむ、そうだね。私とゼーレ君の二名で行こうではないか」
「私もかよ」
と、しょうがないので私とアルテミスの二人で行くことになった。
小舟に乗り、オールを漕ぐ。漕いで、漕いで砂浜に乗り上げたのだった。
島というよりかはジャングルと言ったほうがいい感じの島。
草などが鬱蒼と生い茂り、すごく探索しづらそう。私たちはジャングルに足を踏み入れたのだった。
蔦が巻き付いている木、苔が生えている岩。何年も人が立ち入ってない空間に見える。
「ふむ、この木々……。どれもすごい樹齢を重ねているようだ。この島に人はいないようだ」
「だろうな。人が入ってたらこんな手付かずなはずがねェ」
人が入れない理由がこの島にはあるのか……。
「魔物の気配も感じられないし、危険性は今のところなさそうだ。報告しにいこう」
「そうだな……」
私たちはとりあえず来た道を引き返そうと背を向ける。
その瞬間だった。
「…………ッ!」
「なんだこの気配は!?」
すると、背中の方から無数の手が私とアルテミスをがしっと掴む。
私たちは引きずられるように、連れて行かれたのだった。
「なんなんだこれは! ここはそういう場所か? 私の分野ではなくこれはラプラスの分野だ!」
「どうするよこれ。なんも抵抗できねえぞ」
「大人しく連れていかれるしかないだろう。ただ……不安なのは連れていかれた先、だろうね」
「一寸先は闇だわな」
「ふふ、その言葉が今は最も適切だろうね」
さて、どうなるか……。
私はしょうがないので力を抜き、身を任せる。
どうやら、終着点に来たようだ。
拘束が解かれ、私は目を開ける。
「んだここ。祭壇?」
「のようだね」
階段があり、降りていった先は湖のような広い水たまり。
どこまで連れていかれたのか。ここは一体なんなのか。謎が増えていく。
さっきの手も気になるところだが。
「祭壇……。何かを祀っているのだろうか。だがしかし、供物がない……。何かの神様が連れてきたというわけでもなさそうに思えるが」
「とりあえず、ここ周辺の探索しようぜ。帰れないかもしれねえし」
私たちは祭壇周りを探索してみることにした。
とりあえず湖に飛び込む。何気に深い。私は泳いで岸まで向かうのだった。
湖の中には魔物はいないかもな。
「アルテミス、こい!」
「残念だがー! 私はそこまで行くことはできない!」
と、大声で帰ってきた。
「私は泳げないのだー!」
「なんだよクソ、しょうがねえ」
私は一度泳いで戻っていく。
「水に入れ! 私が連れてってやる!」
「すまない。私は運動はてんでダメなものでねェ。理論などは理解しているが体がついていかないのさ」
「弁明はいいからはやく」
「了解した」
私はアルテミスを連れてもう一度泳いで湖を泳ぐ。現実だったら相当きついぞこれ。
だがしかし、こちら側に来られるんだから動けない制限はないと考えていいかもしれないな。
「あの手がここに連れてきた意味を考えねばね」
「そうだな。とりあえず、探索に……」
と、私たちが行こうとした瞬間、目の前に巨大な牙を生やしたマンモスが現れたのだった。