蒼眼の死神は月を守る
このゲームは基本的に現実世界と時間がリンクしている。
月が落ち、陽が昇ってきていた。これが示すことはもう夜明けだということ。
だがしかし、この喧嘩も終わりがついにやって来そうだ。
「あとちょっと! 一体何時間格闘してきたかわかんねえけど……トドメだ喰らえェ!」
私はグリズリーを思い切りぶん殴る。
腹部に拳がめり込み、そして、グリズリーはふらっ、ふらっとそのまま地面にぶっ倒れた。
そして、そのまま巨大グリズリーは消えていく。これが意味するのは、私の勝ち。
「っしゃああああ! やったぜゴラァアアアア!」
長かった戦いも遂に決着がついた。
私は素材を回収し、そのまま街に戻ってログアウトすることにした。だがしかし、夜明けと同時に決着がついたことにより問題がある。
眠れないということだ。徹夜になってしまったので今から寝たら確実に遅刻するだろう。
まあ、素行不良なのは今に始まったことじゃねえけど……。これ以上遅刻すると反省文書かされんだよな。
まあ、ログアウトして仮眠でも取るか。
そして、私は反省文の紙を手渡されていた。
起きたのは午後0時。もう遅刻に決まっていて、家の電話には結構な数の学校からの電話があった。
私はそのまま学校に向かうとやはり怒られ、放課後に反省文を書いていた。
「それにしても何してたんですか? 夜まで」
「グリズリーと戦ってた。レベルもすんげえ上がったぞ」
「白熱して戻ってこなかったんだー。カノちんらしーね」
「うっせ。反省文書けたから出してくる」
「最早ですか?」
「こんなの5分もありゃ書けんだよ」
私は先生に反省文を提出し、帰る事にした。
鞄をもつと、二人も帰る準備を整えていた。
「校門に車待たせていますし、早く帰ってゲームでもやりましょうか」
「お嬢様め……。歩けよ」
「ふふっ。阿久津家は道を歩くわけにはいかないんです」
「お前そういや阿久津か……」
阿久津家。
昔から莫大な財産を築く資産家だ。会社を複数個運営もしており、日本でも一二を争うほどの金持ち。
そんな金持ちは普通金持ち校に行くはずなのにな。そっちの方が警備も手厚いし。
「狙われるのが嫌ならこの学校にしなきゃよかったじゃねえかよ」
「ふふっ。まあ、物好きなんですよ私も。お婆さまに似て」
「それに狙われてもカノちん助けるじゃーん」
「蒼眼の死神さんはお強いですから」
「蒼眼の死神言うな。それに、信頼しすぎだ私を」
下駄箱から靴を取り出し、履き替える。
校外にでて、門をくぐった瞬間。突如として月能に何かハンカチを押し当てる男性。仲間が衣織と私の口にも何かを押し当てる。
私は気を失うわけにはいかず、腕をがっしり掴んで投げ飛ばす。
「何すんだゴラァ!」
私は月能を気絶させた奴をまずぶん殴る。髪を掴み、何度も顔面にパンチを食らわせると、相手は気を失った。
そして、衣織の方。衣織も気絶しており、男はナイフを構えて私と対峙している。
「てめぇ、なにもんだ?」
「友人だ。てめえこそいきなり襲いかかってくんなんて卑怯じゃねえかよ」
「卑怯もクソもねえ! 殺すつもりはなかったが……死ね!」
と、ナイフで襲いかかってくる。
私はそのまま拳に力を込める。
「うるせえカスが! 動きが遅えんだよ!」
「は、はや……」
私は全力のパンチを鳩尾に喰らわせた。
男はお腹を抱えて疼くまる。私はその男を思い切り蹴り飛ばす。
「うがっ……」
「この私を舐めんじゃねぇよカスが」
と、どこからかパトカーの音が聞こえる。
パトカーが黒い車の後ろに止まった。
「またお前か、市ノ瀬」
「ん。今度は襲われた側だ」
「まあ、今のお前が喧嘩するわけねえもんな自発的に……。で、こいつらはなんだよ」
「私の友人に襲いかかって来たから返り討ちにしたまでだ」
「先輩、この人顔が歪んで……」
「やり過ぎだ」
警察の井上巡査長から思いっきりゲンコツを貰う。
「処罰はそれぐらいにしてやる。本当はダメだがな」
いってぇ。本気で殴りやがった。
私は頭を押さえ、車に月能と衣織を乗せる。そして、気絶している運転手を叩き起こす。
「はっ、お嬢様……!」
「お嬢様じゃなくて悪かったな。お前のお嬢様は後ろで気絶中だ」
「花音様……。なんとか無事だったのですね」
「私がいるからな。ほら、サッサと出してコイツらを寝かせるぞ」
「かしこまりました。まずは衣織様の家に向かいましょう」
ったく。介護してやんなきゃいけねえ私の身にもなれ。
お嬢様ということで狙われるから歩けねえのか。それに、助けること前提として通っているのはどうかと思うがな。もっと安全な場所に通えと思う。
「この借りは高くつけてやるよ、月能」