ガレオン船
フロルアージュという女と一緒に行動していた。
海の浜辺を歩きまわっていると、何やらでかい帆船があった。幽霊船というような感じではなく、真新しい木材を使ってできた船。
今のようなクルーザーではなく、風を受けて進む帆船。初めて見た。あれは多分ガレオンだよな。
「ありゃなんだ?」
「あれは私が作らせた帆船ですわ~」
「あれお前の?」
「はい~。ご乗船なさってみますか?」
「する」
あのでかい帆船。
私たちは崖を下りて、船に乗り込んだのだった。甲板の中央にはでかいマストがあり、帆はたたまれているが、風を受けて進むタイプのようだ。
今のようなガソリンとかで動く船ではない。こういう船好きなんだよな……。かっけえし。
「船内もすごいんですのよ」
「そうなのか?」
「目をキラキラさせて……。ふふっ」
「早く行こうぜ」
私は船内に入ってみる。
客室や、厨房、倉庫などがあり、武器庫、宝物庫、船長室と様々な部屋があった。船としての役目もあれば、ホテルのような快適空間もあるようだった。
「大砲とかも備えてあんのか……。海戦でもするつもりか?」
「まぁそうですね。海には海賊がいるかもしれませんし、念のためにですわ~」
「へぇ……」
私は大砲に触れてみる。
金属質の大砲は初めて見た。無機質な感じが手のひらに伝わって、なんともテンションがぶちあがる。
「こういう船、いつか乗ってみてえな」
「ふふ、現実でですか?」
「ああ。こういうの、乗ったことねえんだよ。友人に頼めば何とかなるかもしれないが……。さすがにこれはOKっていうかわからねえしな……」
月能に頼んでOKはもらえるはずもないな。
あいつは浪費家のくせに合理主義だから使わないものとかは絶対買わないし作らせない。これはさすがにな……。
ゲーム内で我慢しておこう。
「あ、そうです。ひとつお誘いがあるのですが」
「お誘い?」
「私、この船で旅しようと思っているんです。数週間くらい。ぜひあなたも船員になっていただけませんか? もちろんお仲間さんも誘ってよろしいですし」
「……いいのか?」
「はい~。どちらにせよ、船員は集めるつもりではありましたので~。私一人しかいないんですわ~」
……月能に聞いてみようか。
まぁ、こういうのは月能もOK出すだろうな。
「わかった。リーダーに聞いてみる」
「ふふ、大丈夫ですよ。月能さんなら私の名前を出しておけば有無を言わず了承しますから」
「……月能を知ってんのか? お前、何もんだ」
「ふふ、のちのちわかりますよ~。私はあなたが気に入りました。ふふ、これからもフレンドとしてよろしくお願いいたしますね?」
と、正体については教えてもらえなかった。
こいつ一体……。
「あ、時間がそろそろだな。ログアウトさせてもらうよ」
「なら船室をお使いください~。鍵もかけられるので襲われることはありませんわ」
「そうさせてもらう。ありがとよ」
「いえいえ。友達ですから」
私は船室の一室を使わせてもらい、ログアウトしたのだった。