闇会議
闇に染まった空。
ワグマから召集命令がかかり、私は宿屋のほうに急ぐ。宿屋に到着し、部屋に入ると私たちで最後のようだった。
ミナヅキたちはすでに集まっていた。
「ラプラスと行動してたんですね」
「まぁ、ちょっとな。空のことだろ?」
「はい。運営からのメッセージと、アルテミスの仮説。そのことで」
真っ暗な空からは日差しが入らず、明かりをつけて話していた。まだ太陽は沈んでいないというのに。
「原因を突き止めませんか?」
「原因を?」
「はい。さすがに闇に包まれたままというのは嫌ですから」
ワグマがそういうが、反対意見は出ない。
全員が全員、この暗い闇の中は嫌なのだろう。太陽を拝みたいというのは誰しもが願うことだ。だがしかし、別に私はこのままでも構わない。
闇に包まれるなんてのは。
「闇に包まれるって超かっけえじゃん」
「……はい?」
「世界が闇に包まれたなんてすげえかっくいいじゃん」
「……ゼーレってもしかして中二病なのかな?」
「そうじゃねえよ。でも一度は想像したことあるだろ。世界がこうやって闇に包まれたとか、闇に包まれて荒廃していくディストピア感とかすっげえかっけえだろ」
「わり、俺もわからなくはねえんだわ」
「ハーレーもかよ……。いやいや、駄目だからな。ちゃんと太陽を戻さないと」
「そうですね! 太陽を戻すんです!」
このままでもいいじゃねえかよ……。
私は不満げにするが、だれもかれもが無視しやがった。くそ、かっけえのに。
「でも、どうやってっすか? さすがの俺も闇の神とかは知らなかったし、どうやって闇の神と出会うかもわからないんすよ?」
「そこは情報屋である私たちの出番だよねぇモンキッキぃ」
「必死こいて調べろってことっすか!?」
「でもどうするの? 接触って……最初に接触したのは解放しちゃったプレイヤーだと思うんだけど、そのプレイヤーを探してどこにいったかとか聞くのは……」
「無駄さ。どこにいったかなんて私にはわからない」
「……あの」
と、ワグマがアルテミスのほうを向く。
「ああ、言いたいことはわかっているよ。その通りさ。私が闇の神を解放させた張本人さ」
「君か」
「お前かよ!」
「はっはっは。この街の外を散歩していたら、賽の河原に積んでいるような石があってね。無性に崩したくなってしまったわけだ」
こいつ単なる欲望で動いているのか?
「すると、闇の神が現れて、すぐに消えてしまった。そしたら世界が闇に包まれたってわけさ」
「闇の科学者ですねあなたは……」
「世界を闇に染め上げたとかすっげえかっけえじゃん」
「中二は黙っててください」
「ちゅう……」
中二じゃねえのに。
「まぁ、過ぎたことを言っても仕方がない。それより私が気になるのは……。なぜゼーレ君の足に奴隷がつけるような鉄球がついているのかだね」
「これか? さっきつけてもらった私の武器だ。こうやって足を振れば、鉄球が武器のようになるんだよ。便利じゃね?」
「それ相当重いよな……。だからこそ足を振り上げるとか普通は無理なのに……」
「ハーレー。ゼーレのフィジカルをなめてはいけませんよ」
「さらに私の新スキル、黄金武装と組み合わせれば……」
「ちょっと待って下さい。黄金武装?」
「ん? ああ、こうやって黄金にするんだよ、足を」
「どこでそんなスキルを!?」
言ってなかったか。
「人魚の国?」
私がそう言うと、全員呆気にとられた表情をしていた。
「人魚!? 人魚がいるの!?」
「ちょっと待ってください。人魚の国にいったんですか?」
「ん? ああ、行ったぞ」
「人魚はいたのか……。まぁ、この世界はファンタジーだからいてもおかしくはないが、魔物ではなかったのか?」
「魔物じゃなかったな。てか、なんで魔物?」
「人魚は歌を歌って船を沈没させるという話もあるから、魔物としても出るゲームもあるのだよ」
「人魚の国……俺も知らなかったっす」
人魚の国に行ってみたいという声が上がる。そこまで魅力的だろうか。