夜明けとグリズリー
クランも作ったことだし、私はちょっと外に出ることにした。
二人はログアウトして寝ると言っていたが、私はまだ暴れ足りない。喧嘩をしようにも、さすがにPKするとばれたときのワグマが怖い。
なのでこのフラストレーションは魔物に開放するしかないのだが。そんじょそこらの魔物だと弱いんだよな。
そう思いながら、平原へと舞台を移す。
夜の平原はアンデッドも多少いる。が、話によると、フィールドには数体、ボスモンスターと呼ばれる魔物がいるらしい。
ボスモンスターというのはそこらへんの雑魚どもとは違い、レベルも高く攻略が雑魚より難しい魔物ということだ。
この平原にもそのボスモンスターは数体いるのだという。だから私はそれに出会い、戦いたい。
「さて、出会えるかどうかは運っつってたな」
ボスモンスターは絶対にここにいるということはないらしい。
フィールドを常に徘徊しており、運が悪ければすれ違い、出会えないということもざらにあるのだという。
「うしっ、そいつらと出会うまで寝ねえ!」
私はフィールドに駆け出した。
野原をかける。気持ちいい夜風が吹き付ける。が、私の目標はあくまでボスとの喧嘩だ。辺りを見渡しつつ、フィールドを走る。
すると、その時だった。
「あれ、ボスだろ」
私が目にしたのは大きなグリズリー。
そのグリズリーはその辺の雑魚どもより体格がものすごくあり、四足歩行の段階でも私と同じくらいの大きさがあった。
グリズリーは私のほうを見る。すると、目つきが変わり、牙をむく。
「っしゃあ! グリズリー! 喧嘩じゃハゲコラァ!」
私は一発、懐に潜り込みぶんなぐる。
グリズリーは一発殴った程度ではぴんぴんしている。武器は何も装備していないから攻撃力はそこまでない。当たり前のことだ。
だがしかし、ダメージが0というわけではない。というのも、このゲームの仕様上、ダメージ0には基本的にならない。そういう無効化するスキルを使った時ぐらいしかダメージ0というのはならない。
絶対に1ダメージは入っている。それをこいつが倒れるまでお見舞いしてやりゃいいだけ。ただ、攻撃に当たると、今の貧弱装備では絶対耐えきれない。一発もらうだけで致命傷。
そう聞くと少しワクワクしてきた。
「ガァアアアアア!」
グリズリーはその剛腕を思い切り振り下ろしてくる。
私はそれをかわし、右ストレート。一発かまし、身を引く。ヒットアンドアウェイ戦法をしたほうがいいな。
私は拳を構えながらも、相手の一挙手一投足に集中する。動きを見て、行動を選ぶべきだからだ。咄嗟に反応する反射神経は十二分にある。
あとは……そうだな。体力がどこまであるかはわからないが、1ダメージずつとなるとものすごく時間がかかる。根競べとなるだろう。
「さて、夜明けまでに終わればいいが……」
夜明け前まで終わらないと徹夜で学校行くことになる。