呪われてるの?
下着を買い終え、映画を観ようという話になった。
衣織が気になる映画があるということ。
「じゃあ私時間潰してるから……」
「一緒に観るのーー!」
「はぁ? 一人でいいだろ。私こういう恋愛もんには興味ねえぞ」
「興味ないことには本当にドライだよね! 観るったら観る! はいけってーい!」
と、無理やり引っ張られていく。
券を購入させられ、私はシアタールームに入っていったのだった。
パンフレットをもらっており、始まるまでにあらすじを確認しておいてと。
めんどくせぇ。
タイトルは"ポインセチアの花言葉"というタイトルで、内容はというと、小さい頃からいじめを受けて心を閉ざしてしまった主人公が、ヒーローと出会い、助けられていく話。ありきたりかよ。
「ポインセチアの花言葉ってなんなんだろねー」
「……祝福、幸福を祈るだったかな」
「え、その意味なら失恋映画!?」
「いや、悲恋映画として売り出されてねえだろ多分……」
こういうのはたいてい実るんだよ恋が。
「くっだらねぇ。私こういうの観るの嫌だぜ」
「え、なんで?」
「恋とか愛とかくだらねぇ」
「…………」
何が愛。何が祝福。はっきり言って少し妬ましいね。
金払った手前、出ていくこともしたくない。しょうがないので、内容だけは観ることにした。
「じ、地雷だった?」
「少しな」
「おもしろそーだから誘ったんだけど……次は違うのにするね! そうだな……プリピュアとか!」
「ガキじゃねえんだからそんなので……」
「大きいお兄さんたちもよく来るよ?」
「いや、それは……」
単なるオタクの集団だろうよ。
と、辺りが暗くなる。どうやら映画が始まるようだ。私はキャラメルポップコーンを食べつつ、二時間、仕方ないので映画を観ることにしたのだった。
そして、二時間が経過する。
「ふいー! 面白かったぁー! 結ばれてよかったねぇ!!」
「そうでもねえだろ……。あんなん結ばれるに決まってるようなストーリーじゃねえか……」
よくある陳腐な恋愛ものだった。
「もう帰ろうぜ……。疲れた」
「そうだね! じゃー、かえ」
と、言いかけたとき。
背後から叫び声が聞こえてきた。泥棒!と叫んでいる女の人。
すると、私にぶつかってくる男。
「邪魔なんだよどきやがれ!」
「ハァ?」
ぶつかっておいてなんだその言い草は。
私はその泥棒の服を掴み、引っ張る。
「テメェ、人にぶつかっておいてそんな言い草はねェじゃねえか。まずごめんなさいが先じゃねえか?」
「うる、せぇ……!」
「あぁ、そう。まぁ……」
私は頭を掴む。そして。
「泥棒なんてダセェ真似してんじゃねェ!!」
私は後ろにあった柱に思い切り叩きつけた。
男は、そのまま気絶する。私はバッグを拾い上げ、女性に手渡した。
「あ、あの、ありがとう、ございます」
「ん、はら、帰るぞ」
「これ大丈夫? 事情聴取とか……」
「んー、まぁ、通りすがりの正義のヒーローってことで。ずらかるか」
「逃げるの!?」
「当たり前だろ。あっちは手を出してねぇんだ。正当防衛が適用されるかどうかわかんねえ」
それに、気絶させてるしな。むしろこちらが過剰防衛ってことにされかねない。
「それにしても、泥棒に出会うなんてついてないねー。ここ最近ついてなくない?」
「冬休みには車に轢かれてだろ? まぁ、たしかにな。呪われてんのか」
「お祓いいっておいたら?」
「考えとく」
これ以上不幸が続いたら考えなくもないな。