黄金郷
オトヒメと話し終え、私はそろそろ帰るかという話をしていた。
すると、オトヒメは案内したい場所があるといって、私をどこかへ連れて行こうとしている。竜宮城の中には、オトヒメしか知らない道があって、オトヒメしか知らない場所があるということ。そこに特別に案内してあげるといっていた。
私はついていってみる。竜宮城の正面扉の奥にあるサメの紋章。そこにオトヒメが手をかざすと、ゴゴゴゴと重たそうな石扉が開いた。
私たちはそこに入っていく。石扉が閉じ、私はオトヒメに連れられるまま、その場所に向かったのだった。
「オトヒメ、どこに連れて行く気だよ」
「もうすぐわかります♪ いいところですよ♪」
と、上機嫌だった。
そして、ここです、と言われてやってきた場所。私は、目を見開いた。
「なにこれ……。全部黄金……?」
金ぴかに光る洞窟。
金の延べ棒とか、金のナイフとか、黄金で作られたものがたくさんあった。海の中にあるとは思えないぐらい奇麗な黄金。腐食しておらず、黄金の光が私を包む。
「黄金のナイフに黄金の鐘……。黄金のステッキなど、ここは私しか知らない黄金郷なんです!」
「……これをよく私に見せようと」
「あなただけですよ。あなたはいい人に見えましたから」
「……どこがいい人なんだろうな私の」
私は人だって容赦なく殺す。いい人ではない。
ただ、この黄金郷の存在は秘匿にしておいたほうがよいというのはすぐに理解できる。黄金というのは基本呪われているからな。
様々な人が欲しがり、そのために殺し合う。
「好きなだけ持って行ってどうぞ!」
「あんたな……」
私はあきれながらも物色はする。
何かいいものないかなと思いながら、漁っていると何か巻物のようなものがあった。
「オトヒメ、これなんだ?」
「それ? 巻物なんかここにあったんですねぇ」
「オトヒメも知らねえの?」
じゃあ、中身あらためてみっか。
私は巻物を開くと、なにやら巻物が光りだす。
《スキル:黄金武装 を取得しました》
と、スキルを獲得するための巻物だったようだ。
黄金武装。効果は腕を黄金に変化させて、物理耐性、攻撃力、そしてデバフをはじき返す効果があるという。なかなか使えるスキルだ。
なによりやばいのが竜変化と重複して使用できるということ。ただ、MPの問題はあるが。
「へぇ……」
「なんだったんですか?」
「私の体を黄金で武装することができるようになった。こんなように」
私は黄金武装を使用してみる。
私の体が金ぴかに光る。うわぁ、なんていうか、初めて使って思う。なんだこれ。
「まぶしいっ! すごいですね! 黄金になって……」
「とまぁ、こんなもんだった。使っちまったし、これはありがたくもらわせてくれ」
「構いませんよ!」
「ならよかった」
勝手に使って怒られてキルされるのが一番いやだからな。
「ほかにも使いたいものとかあったらいいですよ? 持って帰りたいものとか持って行っても……」
「そこまでなぜ大盤振る舞いするんだよ。オトヒメ、これは私以外に話すなよ」
「独占したいんですか?」
「そうじゃねえ。この黄金郷の存在は簡単に人を狂わせるんだ。人魚もそうだろうが、人間は欲深いからな。すぐに独占しようとするんだよ。だから話すな。これは私と約束しろ」
「はい~!]
わかってんのかこいつ。
「わかってんのか知らねえが……。もういいだろ。私はそろそろ地上に帰る」
「わかりました! 送って差し上げますね!」
「頼む」
私は再びオトヒメの背につかまる。
竜宮城から出て、私は門を通り、地上目指してオトヒメが泳ぐ背につかまっていた。そして、桟橋までたどり着き、桟橋に私は立つ。
「また来たかったらそうですねぇ。この貝殻を鳴らしてください!」
と、渡されたのは貝殻。口が開いている。
使い方はカスタネットのようにたたいて鳴らすらしい。ためしにたたいてみると、ちょっとだけ小気味いい音が鳴り響く。
「この音は深海まで響くんです。この桟橋の上で鳴らしてください」
「わかった」
「それはここでしか使えませんからね! ではでは~」
そういって、海に潜るオトヒメ。
不思議な旅だったな。