リュウグウ
私はオトヒメにつかまって水の中を突き進んでいく。
暗い深海に、なにやら石のようなものが積み重なった箱のような感じのものが目に入ってくる。
「あそこがリュウグウ! 人魚の国!」
「人魚の国……?」
「中に入るよーん!」
と、海底まで降り立つと、貝殻の鎧を着た人魚の女性が槍を私に向けてくる。
「貴様! 人間だな?」
「人間が我らの国に何の用だ」
「私はこいつに連れられてきただけだっての」
「こいつ……? ああ、これはオトヒメ様っ!」
「帰られたのですか!」
「はい! 客人です。いれますよ?」
「ぜひどうぞ!」
ということで、通してもらえたのだった。
あの対応……。このオトヒメという人魚は相当えらい立場にいると見た。そんなやつがなぜ私をリュウグウに連れてきたんだろうか。
その真意はおいおい聞くとして……。すごいな。
リュウグウと呼ばれる国にはきちんと建物が立っており、人魚が泳いでいる。また、光も届かないはずの深海なのに……。
「なんでこんな明るいんだ?」
「それは国の天井にある石に生えてるヒカリゴケのおかげです! ヒカリゴケがかすかに入ってくる太陽の光を何十倍にもしてくれるんですよ!」
「へぇ。じゃあ、ここもちゃんと夜が来るのか」
「そういうことですー、ささ、とりあえず私のお城にいきましょう!」
と言っていた。
お城……。なるほど。なんとなくわかった。オトヒメの正体が。
私はオトヒメに連れられてやってきた場所は、サンゴ礁の門などでがっちりと固められた城のようなもの。
これは多分。
「竜宮城……」
「はい。竜宮城です! いらっしゃいませ~!」
といって、私たちは竜宮城の中に入っていったのだった。
竜宮城をいき、なにやら大広間のところに案内される。玉座のようなものがあり、私は手を離すと、オトヒメはその貝殻の玉座に座る。
やはりリュウグウの……。
「お前、やっぱ女王か」
「はい~! リュウグウ王国女王のオトヒメと申します~」
「だからあんな態度をとられていたか」
門番のあの態度はえらい人間にするものだ。
私はあたりをきょろきょろを見渡していると、ウミガメがやってきて、ウミガメの背には、魚を焼いたものが乗せられていた。
とって食べろということだろうか。私は取ってみる。
オトヒメの前にも同じものが運ばれてきて、口に運んでいた。
「おいし~! 絶品!」
「……たしかにうめぇ」
脂がのってる。塩が程よく聞いており、確かにうまい。が、問題はそれじゃねえ。
「オトヒメ。なんで私を竜宮城に連れてきた? 何か理由があるんじゃねえのか?」
「理由? 特にありませんよ。ただ……」
「ただ?」
「あなたには常世の力があるから気になっただけですよ!」
「……常世」
「私もこのリュウグウの力を受け継いでいるからわかるんです。あなたは大地の力があると」
「大地の力?」
「この世界には、そういった加護を持つ土地があるんです。その土地が選んだものに、力を与える。このリュウグウもその一つですよ」
土地の力……。
そういう土地がある、ということか。
「ある土地に好かれた者はほかの土地が横取りできません。私もリュウグウの力を受け継いでいる以上、ほかの土地の力はもらえないんですね」
「……常世も、リュウグウも特別な土地か」
「そうです。同じ土地の加護を持つもの、やっぱり気になるじゃないですか? なので誘って、お話ししようと! ただそれだけ、です!」
「……理由は分かった」
加護。土地の力。
なるほど。そういう設定か。
「というわけで、あなたがどういう人か聞かせてください! 今日はたくさん語りましょうね!」
「……ま、心配するから早く地上に返せよ」
「はーい」
リュウグウの使い手、オトヒメと私のことを互いに話し合う。
なんとなく、このゲームの世界観を理解できた気がした。