クラン
街へ戻る帰り道、私はイズランドのプロフィールを眺めていた。
所属クラン:戦火の大英雄という項目があった。クランというシステムがあるというらしく、用語辞典で調べてみると、クランは3名以上の人数から成り立つプレイヤー同士のチームとある。要項は私たちでも十分満たしているし、作れそうだな。
「なぁ、クラン作ろうぜ」
「クラン? メリットはありますか?」
「クラン作るメリットは……。うーん、特にねえな。私たちはいつもつるんでるし、知らない人同士でアイテムの交換などというもんも普通に私たちじゃできるし……あ、いや、あるわ」
クランで出来ることを調べてみる。
レア度とかで交換できるかできないかはないし、クランを作ることで生じるメリットはそこまでない気がするな。
うーむ。
「メリットがないのなら今のままでもよいのでは? クラン作ると面倒な奴らが入ってくるかもしれませんし」
「損得の感情で作るものじゃなくね?」
「そうだな。こればかりは損得で動くのもアレだろ、ワグマ。つーわけで、作るか」
「うん! 私リーダー!」
「「それはだめ」」
私とワグマの声がはもった。
優柔不断なリーダーは駄目だ。
「リーダーは私が引き受けますよ。サブは……」
「はいはい! 私! サブでいいからやりたい!!」
「……これもだめっていうとさすがに可哀想ですから。いいですか? ゼーレ」
「いいよ別に。わたしゃリーダーとかサブリーダーとかどうでもいいし。あくまで私たちの中での仮の話だろ? リーダーだから偉いとかそういうのはねーだろ」
「そうですね。あくまで立場だけです。私たちは対等ですから」
「ほんとに対等かな……」
オイリはそこを疑問に持ったようだ。
「では、クラン作る申請をしましょう。どこでやればいいんでしょうかね?」
「クラン申請所というのがあるみてえだぜ。そこでクラン作れるみたいだが……登録料がかかるみたいだな。それは私が出す。今日のレベル上げで得た素材を売っ払えば足りるだろうしな」
「わかりました。では、いきましょうか」
私たちは街へ戻る足を少し早める。
私は冒険者ギルドで素材を卸し、お金をもらう。結構たくさん納品したので、ちょっとだけリッチになった気分だ。
そしてその足でクラン申請所に向かったのだった。クラン申請所ではちょっとだけ混雑しており、今もなおクランを作ろうとする人もいるらしい。
「クランの名前どうするよ?」
「どうするっていわれましても……」
「オイリとゆかいな仲間たち!」
「リーダーはワグマつってんだろボケ」
「むー! そんな強く否定しなくてもいーじゃん!」
名前か……。
「クライノートってのはどうよ」
「えっと、どういう意味ですか?」
「結構昔の言葉なんだけどな。ドイツ語でもともとは宝石を意味してた言葉だ。いいだろ? かっけーし」
「クライノート。いいですね。それにしましょう」
クラン名はクライノート。
「では、クラン、クライノート。今日から始動です!」
ワグマは紙にクライノートと書き、提出したのだった。
まぁ、気に入らなかったらあとからでも追加費用はかかるが変更はできるしな。