人魚が釣れた
港町についた。
ワグマがそれぞれ別行動、好きなことをしていていいといったので、私はとりあえず船が停泊している港に向かう。
港に向かう最中、釣具店という文字を見かけて、入ってみた。
「らっしゃい! ここではいろんな竿を売ってるよぉ!」
「普通の釣り竿にいい釣り竿、高級な釣り竿にぼろ相な釣り竿? どう違うんだ? ってかぼろって売れるのか?」
「お嬢ちゃん、知らないのかい? お魚もお魚の魔物もみんな高級なのが好きなんだよ。釣れる魚が変わってくるのさ」
「そうなの?」
「ああ。高級な釣り竿は運がよけりゃすっげえ魚釣れるぜぇ? その分、値段は張るからそうなんども買えるもんじゃねえけどな!」
ふむ、釣り竿は壊れるとは聞いたことがあるぐらいだからな。
高級な釣り竿の値段を見ると一本5万ブロン。たしかに値段が張るし、そう何回も買えるようなものじゃねえな。
だがしかし、大物を釣るというのは浪漫がある。一度だけ博打うって買ってみるか。
「これくれ。2本」
「あいよ! 10万ブロンね!」
私は10万ブロンを支払い、釣り竿を二本手にした。そして、釣りスポットを教えてもらい、私はそこで釣り糸を垂らすことにした。
たしか……。
「こう投げるんだったか、ルアーを」
私は以前興味本位で調べた投げ方を実践してみる。遠くまで糸が伸び、ぽちゃんと水に落ちる音が聞こえた。
あとは待つのみ。釣りというのは忍耐だというのも聞いたことがある。
「大物こい、大物こい」
十分程度が経過しただろうか。
一向に反応がなかった竿に突然反応が。くいっと引っ張られるような感覚。私は急いで糸を引く。竿が思い切りしなり、これは大物だと確信できた、が、力負けしているような気がする。
「竜変化ぁ! 鬼神スキルぅ!」
スキルフル活用。
私は全力で竿を引っ張った。ここまでしなって折れねえ頑強な釣り竿すげえ。が、この引きはただものじゃねえ。
根がかりでもなく、たしかに何かに引っ張られている。
そして、その時だった。
ざぱぁん!と水しぶきを上げて水面から飛び出してきたのは。
「きゃー----!」
「……は?」
上半身が人間で下半身が魚の女性。
いわゆる人魚というやつが現れたのだった。人魚は木の桟橋の上に打ち上げられる。
「おい、人魚が連れるなんて聞いてねえぞ」
「お魚さんだと思ったのに……。騙されたぁ……」
「…………」
釣りをしてたら人魚が連れた。
何を言ってるかわからねえだろうが、私も理解できてない。なんだよ一体。
「それにしても力強いね! 全力で泳いで抵抗したのに負けちゃった」
「そ、そりゃどうも?」
「私、オトヒメ! よろしくね!」
「私はゼーレ……。オトヒメ?」
「ゼーレ! うん、いい名前の人間だね。ねえ、ゼーレ。竜宮城に興味はない?」
「……浦島太郎か?」
「なにそれ?」
いや、浦島太郎はさすがに通じないよな。
竜宮城か。オトヒメって名前でもしかしてと思ったが。
「一緒に来ない? 姉ちゃん。竜宮城まで送ってくぜぇ」
「なんでそんな悪者みたいに……」
「言ってみたかったの! で、くるぅ?」
「……いく」
「おーけー! じゃあ、私につかまっててね! あと、水中で呼吸は人間出来ないと思うしこのスキルあーげるっ!」
《スキル:水中耐性 を取得しました》
水中耐性というのは、深海の圧力も無効化し、酸素ゲージの減少がなくなるというスキルのようだ。海底に行くにはそれが必要ということだな。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
そういって、私の手を引き、オトヒメは海へと飛び込んだのだった。




