迷惑
話を聞くと、二人はアイドルということがばれて女性ファンから逃げてきたということだった。
というのも、顔でばれた。出会った女性たちは偶然、二人を推しているヲタクだったということで、すぐにわかったらしい。
「ゲーム内じゃプライベートもくそもねえし近寄るなとも言えねえし……」
「うざい……」
「これじゃ窮屈でゲームどころじゃねえよ」
と嘆いていた。すると、扉が開かれる。
「ちょっと通してもらうよ、君たち。なに、何があったかは知らないが、君たちの邪魔はなるべくしないさ。私はここのクランのメンバーでねえ」
「通りますでーす!」
と、アルテミス、デイズの二人も帰ってきたようだ。
「やぁやぁ、奉仕作業お疲れさまだゼーレ君。つかぬことを聞くが、このクランの拠点前にいる集団はなんだい? デモでも起こされたのかな?」
「こいつらのファン、らしい」
「え、ファンいるんですか? 確かに見た目はかっこいいような……」
「デイズ。お前テレビとか普段見てるか?」
「見てますとも! この間も推しのSky Rimの番組予約しましたし!」
「そのメンバー二人だぞ」
「ふぇ?」
デイズは二人をじっと見る。
「ほわわぁ!? ただただにじゅんやんだぁ!?」
「知らなかったのに何でばらすんだゼーレ!」
「くそ……。仲間内にも一人伏兵が……」
「サインください! あ、でもゲーム内じゃだめですね! あ、握手だけでもぉ……」
「デイズ。落ち着くんだ。なんとなくそうかなとは思っていたがやはりか。巷じゃ、Sky Rimの人気はものすごいからねぇ。あの人数も納得だよ」
「あなた……Sky Rimの良さをきちんと理解してないで語るな……!」
「おや? ラプラス君。君もファンなのかい? 驚いたね。占いや未来余地などというオカルトしか信仰してないと思っていたが」
「音楽は別よ」
ラプラスは部屋から出てきて、本人たちの目の前でSky Rimの良さを語っていた。それを興味なさげに聞くアルテミス。本当は仲いいだろお前ら。
「だがしかし、あれだけのファン、どうにかできないか? 迷惑行為として迷惑ときちんというべきだ。節度やマナーを守らないファンなんていうのは自分の庇護下に置くものではないよ」
「……確かに言うとおりだね」
「だけどでて説明するのか?」
「それしかないよ。ただ、君たちの姿を見せるわけにはいかないね」
「ふぇ? なんでです?」
「アイドルっていうのは女の影を見せちゃダメなんだよ。ファンの夢にかかわるから」
「恋愛禁止ってわけじゃねえけどな。そういうのも大事にすんだよ」
「ふーん。じゃあさっさと説明して来いよ。出れねえってのは嫌だぜ。お前らが嫌なら私が力づくで」
「行くぞミナヅキ」
「そうだね」
力づくで……やると言いかけたが遮るように出て行ってしまった。
今日は私たちにやけに災難が訪れる日だな。
「さて……。ゼーレ。頼みがあるのだが」
「頼み?」
「少しばかり私と模擬戦をしてくれないか?」
と、驚くような提案だった。
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