無断アップ
掃除屋との一戦が終わり、私は教会で奉仕作業を行っていた。
死んだペナルティは、聞いていたより少なかった。5レベルしか減少せず済んだのを見ると、10レベルを減らすにはあくまで掃除屋の手によって殺された場合となるんだろうな。
まぁ、こんだけで済んだのはまだいいほうだろう。ひたすら奉仕作業をしないといけないってのがなぁ。
私は草むしりをしていると。
「おい、お前がトッププレイヤーのゼーレだな?」
「あん?」
私は声がしたほうを見た時だった。刀が思い切り振り下ろされる。
私は躱し、その男の首根っこをつかむ。
「初対面で刀を振り下ろすとはマナーがなってねぇな。初めまして、が先じゃねえのか?」
「ちっ。まあ最初からこんなんでキルできると思ってねえさ」
そういって彼は剣を手放した。両手を上げ、降参と声を出す。
「悪かった。噂にたがわぬ実力だな」
「……なんなんだテメェ」
「俺はクラン:ガーディアンズに所属する戦士のガーディ。ゼーレ、よければ俺らのクランに入らないか? 俺たちはお前のような実力者が欲しい」
「クランの勧誘かよ。私はすでに入ってんだからあっちいけ。乗り換えるなんてこともしねえよ」
「ふむ、そうか。ならば引くしかないか」
「ああ」
そういって、男は去っていく。
フレンド許可だけ送ってきやがって。ちゃっかりしてやがる。ま、承認してやるか。面倒ごとを頼まれたら受けねえけど。
ったく、奉仕作業をしないといけねえってのに変なのに絡まれて時間少し無駄にした。私はまた草むしりをしようとすると、再び声をかけられる。
また、クランの勧誘だった。
そのあとも、クランの勧誘がひっきりなしにやってくるのだった。一体何なんだと思いながらも、私はノルマを終わらせ、急いでワグマのところに戻る。
「今日、めっちゃクランの勧誘来たんだけどなんかあったのかよ」
「さぁ……。そういうのは私よりオイリのほうが詳しいと思うのですが。私より情報つかむの早いですし」
「ならオイリに聞くか。オイリー」
「呼んだー? あ、ゼーレじゃん! ちょーどいいところに! あのねあのね、ゼーレが掲示板で話題になってるよ」
「私が?」
「これ」
動画付きで掲示板に戦っている様子が載せられていた。
掃除屋との闘い。私が結構身軽な身のこなしで戦っている様子が誰かに撮られていたらしく勝手にアップされていたらしい。
「これ見た人たち、強いなら勧誘したいんだって言ってる。でも実力じゃ勝てないから話し合いとかって」
「なるほど。今日来たのはそれか……。ちっ、無断でアップするとはいい度胸してんな……。報復に……いきてえけどまたカルマためるだけか……。ネットってのはだれにでも簡単に使える分、やり直しがきかないってのに。しかも掲示板とかいうあまたもの人に見られる場所で……」
「んー、なら書き込んでおくよ。クラン入ってるから勧誘に来るなって」
「頼む」
「いざとなったらリアルファイトに持ち込めますがどうしますか?」
「……特定はしなくていい」
そっちもそっちでめんどくせえだろ。
私たちが迷惑をこうむっていた時、突然それはやってきた。バン!と勢いよく入ってきたのは二人の男。ミナヅキとハーレー。
何か焦ったように逃げてきていた。
「どうした?」
「ば、ばれた……。僕たちがアイドルってこと……」
「……クランもばれた。わりぃ」
「……災難ばかり訪れますね」
災難が再びやってきた。
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