私たちの出会い
桜舞い散る4月。
今年から高校生となり、1週間が経過していた。私は周りから恐れられており、避けられている。噂が広まっているのか、それとも私の身なりか。
ま、どっちでもいいけどな。
私は教室に入ると、私の机の上に誰かが座って話しているようだった。
たしか……。
「花本。私の席に座んな」
「あ、ごめんごめん! 許してちょ!」
「……チッ」
私は鞄をおく。
花本は前の阿久津という女と話していたようだ。出席番号順の席だから、阿久津、市ノ瀬という順番。
花本は遠いとはいえ、机に座るのは行儀が悪い。
「……随分と感じ悪いですね」
「あ? 朝だからな」
「朝だからといえどそういう態度はどうかと思いますが」
「うるせえな……。どうでもいいだろ」
阿久津という女は口煩いようだ。めんどくせえ奴が前になったもんだ。
前がうるさいとここにいたくねえな。家にもいたくねえってのに……。
「まぁまぁ、怒んないで! 笑顔笑顔〜!」
「……うるせえな」
うるさい奴らが前になるもんだ。
そして、放課後になる。帰ろうとして校門をくぐったときだった。黒塗りの車が停まっている。明らかに場違い……。高級車。
一体誰の?と思っていると。
「出迎えありがとうございます」
「いえ」
「ほら、衣織。送っていきますよ」
「ありがとー!」
と、花本と阿久津が乗り込んだ。
これは阿久津家の……。阿久津家っていやぁ、金持ちの家でそういう名前のやついるよな。もしかしてそこの娘か?
ふむ、それならば関わりたくねえな……。
私はすぐに帰ろうとして、歩いていると。
キキーッという甲高いブレーキ音。
私はすぐに振り返るとそこにはさっきの高級車がこちらに迫ってきている。
運転手はなにやらハンドルに突っ伏しており、操作できる様子ではなく。私はただ呆気に取られて立ち尽くす。
そのまま、私は高級車に撥ねられ、コンクリートの塀まで突き飛ばされて背中を強く打ち付ける。
車もぶつかって停まったようだ。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫なわけねえだろ……」
「あ、大丈夫みたいですね。立ててますし」
「お前にはこの頭の血が見えねえの?」
背中が痛い。
立っているのもやっとなのにこいつは何を抜かして……。ああ、くそ。頭がボーッとする。
車に轢かれるのは初めてだ……。ちくしょう。
「とりあえず救急車を……」
「いらん。お前、あの阿久津だろ。そんな金持ちの家と私を関わらせんな……」
「ですが……」
「いい。いらん。こんなの唾つけときゃ治る……」
私はふらつく足取りで、帰路につく。
頭が痛い。頭も打ったか? 体も痛い。どこか折れたかもしれない。
ついてねえ。なんなんだ今日は。
私は歩いていると、花本という女が私に抱きついてきたのだった。
私は文句言おうと思ったが、体が上手く動かず、そのまま地面にぶっ倒れたのだった。
目が覚めると病院だった。
包帯が巻かれており、隣には阿久津と花本が神妙な顔で座っていた。
「目が覚めましたか」
「よ、よかったぁ……。死んだかと思ったぁ……」
「……なんでいんだよ」
「こちらは加害者ですから。見舞いにくるのは当然です。改めて申し訳ありません。運転手にくも膜下出血が見られてまして……あなたを轢いたというわけです」
「あっそ」
「はい」
少しの間沈黙が流れる。
「ちょっと汚ねえ話になるけど、これは貰えるんだろうな?」
私は親指と人差し指で輪っかを作る。
「治療費と慰謝料は出しましょう。ただ……」
「ただ?」
「あなたは阿久津家と関わり合いたくないのですよね? だとしたら関わり合いになってしまう慰謝料は受け取れないのでは?」
「……お前性格悪いとか言われない?」
「生憎言われたことはございませんね」
性格わっりぃ……。
「仲良くしてください。これからも」
「…………私と関わったらろくなことねえぞ」
「ふふ。車に轢かれるくらいですからね」
「うるせえよ」
「あなた、雰囲気からしてとても強そうですし、私の身を守ってくださいよ」
「なんでだよ」
「私これでも御令嬢ですよ? 誘拐とかされたらどうするんですか」
「ならこんな都会ともいえねえとこの高校通うんじゃねぇよ」
警備しっかりしてる高校とかあるだろうに。
阿久津家のお嬢様がなぜ私なんかと仲良くしようとすんのか。
お嬢様の趣味はわからん……。
「って感じだったか」
「大体そうですね」
「ちょっと待て。轢かれた? 私の車に……?」
「お父様には言っておりませんでしたね」
茂治さんは初耳だったようだ。
「……あっ」
「月能。帰ったら私の部屋へ」
「……花音?」
「助けねえよ。そっちも私被害者だろ」
なんで助けないといけねえんだよ。お前が悪いだろ。
運転手の件は仕方ないとはいえど、人を轢いて保護者に何も言わないのはどうかと思う。
多分その時伝えていたらその時に出会ってたんだろうな。
「月能。流石にこればかりは叱っておこうか」
「…………はい」
「青ざめているということはいけないことと自覚はあったんだな」
茂治さんは頭を抱えていた。
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