第五話
第五話です。お楽しみ下さい。
サリアと別れ部屋に入った俺は驚いた。部屋の汚さにだ。
クモの巣が張られている窓に、部屋の隅に溜まった埃の多さ、ベットのシーツは少し汚れていてシワだらけで、汚いという言葉がとても似合うような、そんな部屋だった。
「汚い部屋だな……これもあの王の嫌がらせか?全く…あんなのが王でこの国は大丈夫なのか?」
心の中で王、アンベシル・フォン・ロワについて文句を言いながら、俺は部屋の窓を開けた。
窓を開けた途端に、外から爽やかな風が吹き、部屋の中の埃は、粉雪のように舞った。
「ゲホゲホッ…ゴホッ……どれだけ掃除してないんだよこの部屋」
舞った埃でむせた俺は部屋の隅にある埃を薄目でジトっと睨んだ。
(まずは掃除しないとな……)
絶対に掃除をしないと。そんな使命感に駆られた俺は異世界に来て真っ先に部屋の掃除をするのだった。
部屋の隅々の汚れは、最早ボロ雑巾と呼んでも違和感のない汚れたシーツを雑巾代わりにして拭いた。その後も、窓を開けたままで換気をしたことにより、最初に部屋に入った時と比べると心無しか空気が綺麗になった気がした。
掃除を終え、俺は今日あった出来事を思い出していた。
「えっと……確か学校で光星達と喋っていたら異世界に召喚されて、それでステータスを見ると最弱職業の一つの『隠密』で、王に出て行けと言われて…何とか出て行かなくてすんだけど、汚い埃だらけの部屋に入れられて……掃除して………あれ……?今思い返すと、ろくなことがないな……」
(そうなのだ。異世界に来てから本当にろくなことがない。第一、異世界で散々な目にあって、疲れたのはわかるけど、何で異世界に来て初めにやる事が掃除なんだよ!!)
俺がそんなくだらない事を一人悶々としながら考えていると、部屋の外から誰かが近づいてきて、俺の部屋をノックした。
「夜君、今大丈夫かな?」「夜、五人で話したいことがあるんだ」「取り敢えず部屋入れてくれ〜夜〜」「これからの事について話しておきたいの」
ノックしたのは、やはり光星達だったみたいだ。
俺は「分かった今開ける」とだけ言うと、部屋を開けて四人を中へ招き入れた。
「お邪魔します」「ここが夜君の部屋?」「何て言うか、その」「汚いわね」
「そんなにハッキリ言うか?!しょうがないだろ!あの王様が俺にちゃんとした部屋を用意するわけもないし」
梓に部屋が汚いと言われた俺は、まるで言い訳をする子供みたいな言葉で梓に言った。
「分かってるわよ…この部屋は王様が用意したから、仕方が無いのよね?」
優しい、まるで癇癪を起こす子をあやす母親の様に、梓が言った。
(何か凄く馬鹿にされてる気がする……)
梓とそんな会話をしていると、光星が呆れたような顔をして、こう言った。
「もう…今はそんな事をしている場合じゃないでしょ?」
光星に言われ、俺達はふざけるのをやめて真面目に話を聞いた。
「夜はステータスが低いんでしょ?それに、王にも疎まれているよね?」
と光星が言ってきたので
「まぁな……無能と言って城から追い出そうとするような奴だし、これからどうなるか分からないな。」
と答えた。
「これからどうするの?」
「皆と一緒に訓練して、強くなる事を目指す……かな?」
陽菜の質問にそう答えると、武が「夜は強くなりたいのか?」と聞いてきた。
俺は頷きながら「強なるのが目的じゃなくて、あくまでも生きるための手段だけどな」と言った。
「なるほど」と光星や梓が言い、陽菜は1人深く頷いていた。
その後も、これからの事を光星達と話し合い、暫くして解散した。
光星達と解散し、一人になった俺は改めて考えていた。
「まさか俺が最弱職業になって、生きる事も難しい様な、状況に立たされるとは思いもしなかった。」
この低いステータスでどうやって生き延びるか……
「やっぱり職業の名前通りに、『隠密』に特化したステータスだな…後はAGIとDEXが少し高いぐらいか?
このステータスを見る限り、隠密者で気配を消して敵の死角から、高いAGIを活かして接近、DEXでクリティカル狙いっていうのが、セオリーかな?」
そうして戦い方を一人模索していると、睡魔が襲ってきた。
「眠たいな……そろそろ寝るか。そういえば…母さんや結衣は心配してるかな〜?どうにか連絡を取りたいけど、方法は無いと思った方が良さそうだな。」
地球に残してきてしまった母や、妹の事を思いながら、俺は静かに眠りについた。流石にシーツは使えないので、壁に寄りかかってだ。
(いい夢見れるといいなぁ……Zzz… )
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