第三十二話
「隠密神発動……鴉の黒羽…!!」
気配を、全てを隠した俺は魔物の背後に周り鴉の黒羽を撃つ。
黒羽は魔物に深く突き刺さり、そして貫いていった。
「グルルルルゥ!!」
魔物は、体を貫かれても最後まで抵抗しようとして雄叫びを上げる。
ブシャャア
しかしそれは無策だ。
「グル……グルル……」
魔物の体から血が吹き出し、辺りに飛び散る。
その血は青かった。
「青い血って…吐き気がしてきた……」
血を見て気持ち悪いと思うことはあれど、命を奪うのにもはや抵抗は無い。
自分でも悲しいものだ、少し前までは命を奪うなんてことは、禁忌すべきことだったし、絶対に出来なかっただろう。
これも全てこの世界に来た結果だ。
「環境は人を変えると言うが、まさにその通りだな」
ドシャッ
魔物は吹き出す血すら無くなったみたいで、しずかに倒れた。
「あっ、死んだか」
自分でもゾッとする程に冷たい声が零れる。
「…それにしても、この層の魔物は殺すのに時間がかかるな」
俺は今99層にいる。
98層の魔物も攻撃が速く力強かったが、99層の魔物とは比べ物にならない。
これも100層がすぐそこだからだろう。
「ステータス」
俺はそう唱えた。
影峰 夜
職業 隠密神
種族 人族14%神族86%
HP 表示できません
MP 表示できません
STR 表示できません
VIT 表示できません
DEX 表示できません
AGI -
INT 表示できません
MND 表示できません
LUK 95
ユニークスキル
隠密神
鬼神
神眼
虚空
嵐魔法神
氷結魔法神
「いつ見てもチートだな!変わり過ぎだと思うけど……」
そう、これが今の俺のステータスだ。
適応中だったが、最近適応が終わって見られるようになったのだ。
スキルだが、『隠密神』はチートの中のチートで群を抜いている。
なんと状態異常無効、短剣神や気配察知はもちろんのこと立体機動や交渉術、算術が統合されたのだ。
「大量のチートスキルが統合されてもうチートって範疇を超えてるよな」
思わずそう言う。
「それに神眼は夜目、鑑定、遠視、透視等視界を妨げるものは全て効かず、少し変わったものだと時空視なんてものもあるしな」
どんな状況でも、完全に対応出来る眼を手に入れたのだ。
時空視はその名の通り時空見ることが出来る為、魔力や生命力、魂や霊と言ったものまでこの目で見ることができ、未来や過去も見ることが出来る。
「未来や過去を見ようとしたら代償がデカいが、いざという時には使えるっ!!」
他のスキルの虚空はアイテムボックスの完全上位互換で、虚空の空間を創れる。生物も入れられる。
嵐魔法神や氷結魔法神は嵐や氷結を好きなように操れるようだ。
「こんなスキルばかり持っていたら、ここのボスも簡単に倒せると思ったんだけどな……」
このダンジョンは難易度が狂っているみたいだ。
今の所は負け無しだが、というか負けたら死ぬが、それでもこのチートスキルですら一撃で倒すことが出来ないのだ。
今までの経験上、ボスはその一つ前の層の魔物の5〜10倍の強さだった。
「今回は最終層だ…もしかしたら20倍なんてあるかもしれない」
未知数な敵に挑む恐怖は凄まじく、何度俺の心を降りかけたことか……
「それでも、それでも陽菜や梓、サリアにギルベルト師匠、マリアさんに武に会いたいと思ったから頑張ってこれたんだ」
その人達のことを思うだけで、胸が暖かくなる。
俺の心の支えだ。
「そしてアイツに復讐するまでは…!!」
弾むような気持ちが一転する。
心を蝕む様なドロドロとした復讐心、殺意、そんなものが胸の中に広がり、俺を侵食する。
「如月 光星……お前だけはこの手で」
俺が出した言葉は、復讐心や殺意に溢れた言葉だった。
しかし自分でも気づかないくらいに小さく、悲しみが混じっていた。
「いや、今はボスだ」
俺は頭を振り、リセットする。
「ボスを倒せば、好きなようにできる…今はボスだ」
光星への察知をボスへと向けて俺は階段を降りていった。




