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子竜、世界を見る  作者: 笛口秋雲
第一章
8/10

海面

 母親に助けられてから暫く経ち、彼女は海面すれすれを飛んでいた。

 なぜ飛べるのだろうか。

 僕はどれだけ翼を動かしても飛べなかったが、母親は翼を殆ど動かさずに難なく飛んでいる。どうやって浮力を得ているのだろう。


 母に胴をがっちりと掴まれた僕は、海面に向けて足を伸ばした。すると海面の波に当たって弾き返される。白波が立つ感覚が面白く、何度も波に足を当てた。


 既にかなり長時間飛んでいるが、高度が下がってから見えなくなってしまった陸地は、未だに見えてこない。



 海面を眺めていると、突然、足下の水面が暗くなった。

 母親が大きく羽ばたいて、弾かれるように上昇する。


 その直後、海面から黒い巨大な魚が、大きな口を開いて飛び出してきた。水しぶきの中に見えた口の中には、大量の牙が生えている。

 巨大な口は、僕の足の先端すれすれで音を立てて閉じた。口のまわりには、ぎょろりと僕を見ている四つの目玉があった。


 母親さえも丸呑みにできそうな巨体が海に沈んでいき、再び大きな水しぶきが上がる。

 その様に、僕は恐怖を覚えた。


 母親は、僕の怯えを感じ取ってくれたのか、怪魚から逃れるためか、少しだけ上昇した。



 そのまま暫く飛び続けて、辺りが真っ暗になった頃に漸く陸地が見えてくきた。


 あの後にも、海中から何度か襲撃を受けたが、母親は事前にそれが分かっていたかのように全て回避していた。

 何か僕には見えないものが、見えているのかも知れない。


 徐々に近付いてきた陸地は緑に覆われていて、所々に木々よりも大きな黒い岩が見えた。


 観察していると、点在する大きな岩が、蠢いていることに気付いた。ゆっくりと、形を変えながら移動している。

 巨大な生き物なのかもしれない。



 動く岩を観察していると、いよいよ陸地にたどり着いた。

 母親は、海岸の砂浜に僕をそっと下ろして、彼女自身も着地した。

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