幕間・我が子
卵が割れる音が聞こえて、私は目覚めた。
興奮して一気に起き上がりそうになったが、一度卵を踏み潰しかけたことを思いだし、ゆっくりと起き上がる。
「キョエゥ」
可愛らしい声をあげる我が子を初めて見た瞬間、私は息を飲んだ。
身体を包む鱗が、光を反射して虹色に輝き、頭頂部から後頭部にかけて、私にはない半透明な水晶のような角が二本生えていた。
何より、あの竜に似た深い紫の瞳は、煌めく光彩が、光の当たり方によって赤や青に変化している。
生きた宝石、という言葉が頭に浮かんだ。それほどに美しく、幻想的な、特別なものを感じさせる外見である。
自分の殻を口にくわえたまま、キョロキョロと首をふる様子は私の中の何かを動かした。
そして、無意識に開心の術を使った私は、さらに驚いた。
この子は既に、読み取ることが難しい程に成熟した思考能力を持っていた。
やはり何か特別な存在なのだろう。そんな予感めいたものを感じる。
『私が、守らなければ』
と、強くそう思った。
数日後、この大地から飛び出して、急激に落下している我が子の気配を捉えて、とんでもなく焦ったことは言うまでもない。