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子竜、世界を見る  作者: 笛口秋雲
第一章
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会話

 目が覚めると、そこは母の背中だった。僕は、森の中を歩く母の背に乗っている。

 僕が気を失った場所と違い、周囲には低木が増えていた。


 つと身体に意識を向けると、違和感があった。原因は分からないが、何となく五感が冴えている気がする。

 感覚器官からの情報が増えたようだ。

 

 僕がきょろきょろと見回していると、母が顔を僕に向けて呼び掛けてきた。


『おはよう、体は大丈夫?』


 母の言葉が理解出来た。

 そのことに、驚きと喜びを覚える。同時に、僕自身もこの言語を理解し、使うことが出来るようになっていることに気付いた。


 なぜ突然? と考えたところで、眠る前の事が頭を過る。おそらくあのとき何かあったのだろう。

 

「キャァャ」


 返答しようとしたが、意味のある音を発することは出来なかった。どうすれば良いのだろうか。


 そう考えた時、ふと気付いた。彼女の思考が伝わってくるということは、既に僕の思考も彼女に伝わっていて、読まれているのかも知れない。


『どうしたの? お腹すいた? どこか痛いの?』


どうやら伝わってはいなかったようだ。どうやって返事をすればいいのかと、改めて強く念じてみる。


『何か伝えたいの?』


 今度は伝わった気がする。僕は肯定の意味を込めて頷く。


『そうなの? それなら伝えたいことを思考の表層に持ってきて。そうすれば、私が読み取れるわ』


 思考の表層とやらはよく分からないが、先程のように強く念じると、大まかなことは伝わるようだ。

 もう一度、気になっていることを念じて尋ねる。


『何故唐突にあなたの言葉が分かるようになった?』


 再び念じると、明らかに先程とは違うことが起こった。

 頭の中にあった思念が自然と明確な言葉になり、僕と母に精神的な繋がりのようなものがあることを感じる。


 何が起こったか分からずに困惑していると、母が呼び掛けてきた。


『さすが私の子ね、もう話せるようになるなんて。でも、私のことはママって呼んでいいのよ。お母さんでも良いわ。それで、なんで言葉が分かるようになったのかというと、あなたが言語の恩恵を得たからよ』


 どうやら、今回は考えが正確に伝わったようだ。

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