プロローグ
―――目が覚めれば違った世界が広がっていればいいのに。
目の前の白い天井の光景を見て、そこが【日常】の一部であると気づく。繰り返される日常に嫌気が指すと同時に、眠気から徐々に覚め、冷静になる頭が、幻想に浸った頭をバカバカしいと罵る。
時刻を見ると時計の短い針は午前7時を指している。正確には7時ちょうどの2分前。デジタル式の目覚まし時計のアラームは7時ちょうどに設定してある。普段はうるさく感じるアラーム音との格闘を経て起床に至るが、今日は珍しくアラームが鳴る前に起きてしまった。
背伸びをしてから布団を出ると、今にもアラーム音を部屋全体に撒き散らさんと意気込む目覚まし時計に手を置く。
ピッ・・・
ワンコールもならぬ程の速さで止められた目覚まし時計は、無機物でありながらまるで飼い主に遊んでもらえない犬の様な寂しい表情を見せたように感じた。
今日も今日とて登校日。勉学に励む学生生活の朝は忙しい・・・わけでもなく、時間に余裕を持たせた自身にとっては、のんびりと準備をすることができる。
変わり映えの無い、いつもの日常の一コマだ
「何か面白いこと起こらないかな」
彼の口からはそんな一言が呟かれる。勿論そんなことを言っても何も起こる事はないと本人は分かっていた。そんなことで何かが起こるのは物語の中だけだ。
自分でわかっているつもりでもそうつぶやいてしまう。成谷 翔の日常てきな一日がまた始まろうとしていた。