八話 対決
すいません、少し遅くなりました。対決シーンが難しかった。短くてすいません。
俺は、自分に掛かる重さを感じて目が覚める。そして、重さの正体を見る。
「なんだ、ハクアか...。俺の上で寝るなよお前」
「あ、クロト。おはようございます。昨日はすみません。あのように、はしゃいでしまって」
「俺は、今の状況もその延長戦上にあると思っているんだが...」
「...すいません」
ハクアは、自分が俺の上に裸で寝ているのを見て直ぐに、謝りながら時計の中に入っていった。
まったく、ちゃんと服着てくれ。
(...分かりました)
分かってるならいいんだが...
「何か懐かしいな...このやり取り...」
ふと呟いた言葉だが、こんなやり取りを過去にした覚えはないし見た覚えも無い。自分の発言に疑問を覚えた俺だが、どうでもいい事だろうとそれ以上深く考えなかった。
「さてと、昨日聞いた通りだとすると、俺は今日義父さんの娘の一人と戦う事になるのか...覚悟しておこう」
俺は時計を取り出して、今の時間を確認する。
午前五時三十九分。結構早く起きちゃったみたいだ。まぁ、自分としてはだけど...
「何時もの運動をやっておくか?でもなぁ、疲れたくないんだよな。...よし、少しだけやるか」
そう思って俺は腕立て伏せや腹筋など、部屋で出来る運動(筋トレ)を少しやった。
十五分後...
「いや~、何か楽になったなこの運動。上がりまくった身体能力のせいだろうけど...やっぱ嫌だなこの力、狡いという気がして止まない。今までの努力が無駄になるような感じがする。...体の方は変わっちまったが頭の中は変わってない筈だ。それならこの頭で作戦を考える!」
俺は昔から、他の人の話を盗み聞きしたり、あの屑なおy...男女の話を聞いたりして色々な事を学んできた。
ある程度の常識も知っているし、計算や魔法の事も少しは知っている。
しかし、剣術や体術などは全く知らない為、自分の戦い方は我流だ。そんな拙い戦い方でもゴブリンをある程度圧倒出来たのは、ゴブリンたちの技術の無さと身体能力の圧倒的な差だと思っている。その証拠に、衛兵との戦いの時は結構ギリギリだった。
だから、もし義父さんの娘に勝てるとするならば対策や作戦を立てるしかないんだが...
「相手の戦い方が分からないから出来ないんだよな」
そう、俺は相手の事を殆ど何も知らない。知ってるのは、女という事しかない。
「厳しいな」
そんな事を思いながら、色々なパターンを考えることにした。
十一分後...
コンコン、と扉をノックする音が聞こえ
「クロト君、起きてる?中に入ってもいい?」
と、マイケルさんの声が聞こえる。
「起きてます、入っても大丈夫です」
「そうかい?それじゃあ...」
扉が開かれ、マイケルさんが入って来る。
「おはよう、クロト君。後三十分で朝食なんだけど、お風呂とか入ったりするかい?」
お風呂か...少し汗も搔いたしな...
「はい」
「そうかい、分かったよ。それなら、服の着替えとかも用意しておくよ」
「お願いします...そう言えば、昨日俺が着ていた服なんですけど...「あぁ、それなら袋に入れた後少し経ったらハヤトさんの所に送られている筈だから大丈夫だと思うけど...」え?」
そう言えば昨日、袋を何処かに置いたり渡したりした覚えが無い。疲れてたから気付かなかったみたいだ。
「それじゃあ、お風呂に行こうか。着替えを持って来るから少し待ってて」
と言って、マイケルさんは部屋から出て行った。
「...時計、この部屋に置いておくか」
俺は静かに、時計をベッドの上に置いた。昨日の様な事は起こって欲しくないから...
それから俺は、着替えを持って戻って来たマイケルさんに風呂場に案内され、汗を流して服を着替え、タオルを物干し竿に掛け、部屋へ戻り時計をポケットに入れ、マイケルさんと別れ、遂に朝食の時間になった。
緊張している中、部屋の扉を誰かがノックする。
「俺だ、クロト。遂に他の家族と会う時が来たぞ」
俺の返事を待たず、扉を開けながら言う義父さん。
「...行こうか」
覚悟を決めてそう言う。
「よし、それでは行こうか」
何となく面白がっている義父さんと食堂へ向かう。
何も話さず、歩いて向かう。食堂には直ぐに着いた。
「行くぞ...」
「...」
俺は静かに息を呑む。
そして、扉が開かれた。
中には、大きな長方形の机があり、その周りに二人の女性と俺と同じくらいの二人の女の子が座っていた。全員、とても美人だと思った。
「クロト、紹介しよう。まず、金髪赤眼の女性、俺の妻の一人[マリーヌ・アドリステン]」
マリーヌさんは席から立って、お辞儀をする。何となく好戦的な眼だ...
俺も、同じようにお辞儀をする。
「次に、銀髪碧眼の女性、もう一人の俺の妻。[セレナ・へレスムン]」
また、同じ様にお辞儀をされる。その眼は俺を観察している様だ。
そう気付いても、俺もしっかりお辞儀をする。
「後は、俺の娘達、金髪赤眼の[フラム・アドリステン]と銀髪碧眼の[ルキナ・ヘスレムン]だ」
その二人はお辞儀をせず、静かに俺を見ている。結構怖い。
「お父様」
急に、フラムさんが義父さんに声を掛ける。
「ちょっと、その方と戦ってみてもいいですか?」
「いいぞ、そうなるだろうと思って、用意もしてある。お前もいいだろう?クロト」
用意までしてんのか!とツッコミたいが場が場なので自重した。
「あ~、うん。こんな展開も予想していた」
「よし、それでは訓練場に転移するか」
「え?」
転移って何だと聞こうとした時、義父さんが俺の腕を掴む。
「「「「「転移」」」」」
その瞬間、目の前の景色が変わる。地面は固い土になっている。日の光が体にしみる。どうやらここは外の様だ。
「さて、戦いましょう。無能さん」
フラムさんが俺の前に出てきてそう言う。その手には木剣が二本あった。
「はい、片方は貴方の分よ」
一本を俺に渡してくる。俺は、少し警戒しながら受け取った。
「さて、試合を始めるか。両者位置について!」
義父さんの掛け声で、俺とフラムさんは同時に少し距離をとり、剣を構える。フラムさんの構えは素人の俺から見ても綺麗だと思った。
「よーい、始め!」
声と同時に、フラムさんが駆けて来る。どうやら、速攻でけりを着けようとしているようだ。
「...っ!」
しかし俺は動体視力も結構上がっている為、なんとかフラムさんの剣を受けることが出来た。
少し驚いた様だったが、直ぐにフェイント混じりで追撃してくる。
右かと思ったら左から、上から、下から、剣が迫ってくる。その全てを身体能力任せで防ぎきる。
「...やるわね。この時点で私は貴方を無能とは思わなくなったわ!」
「嬉しいけど、結構きついっ!」
戦闘中に話すのはダメだろ、と思いながらもしっかりと答えておく。
「本気を出させてもらうわ!」
フラムさんの剣速が上がる。俺は何とか防ぐが、少し当たっている。
少しでも結構痛いもんだな。
今の所俺は、防戦一方だ。それを覆すのは結構難しい。
それなら、年齢相応の技を使って勝ってやる。それを狙うのは、剣が真上から来た時...ここだ!
「うおっ!?」
その力の強さに片膝をついてしまうが、鍔迫り合いまで持ち込めた。
「貴方、力強過ぎじゃない?魔力で強化した私と同じ位って...」
「ありがとよ。でももう少し強く出来るんだよっ!」
声に力を込めて、腕の力を抜く。俺の言葉に惑わされ、更に力を入れてしまったフラムさんは体勢が崩れる。
「...え?」
俺はそれを見逃さず足を掛けて、ついてしまった膝に力を入れフラムさんの後ろに回り押し倒し剣を突きつける。
「俺の勝ち、でいいんだよな?」
「...何で貴方無能なんて呼ばれているの?」
戦いは俺の勝利で終わった。
義父さん以外は、皆とても驚いていた。
多分あと一話、今週中に出します。