七話 嵐の前の静けさ(そんなに酷くない)
一話の タルンドル・ゾデブをゾデブ・タルンドルに変更しました。
少し経った後、俺は床に落ちている剣を拾った。俺から見ると柄の部分の歯車が露出しているように見えて、回り続けている歯車に手が引きずり込まれるんじゃないかと思ったがそんな事は無かった。
「軽っ」
機械的で重そうな見た目とは違い、とても軽い。
「軽く振ってみるか...よっと」
すると、ヒュンッ、という鋭い風切り音がする。
はっきり言って、剣なんて使ったこと無いから分からん。
「他にも何か出来るのか?例えば...盾を創れ」
するとまたもや時計から歯車が出てきて、盾の形を創る。
「ほんとに凄いな、この時計...そういえば、何でさっきから黙ってるんだ?ハクア」
「い、いや、こんな強力な魔道具見たことが無く、とても驚いてしまって」
「お前でも驚くって、これすげぇな」
俺は魔道具については何も知らないんだよなぁ。もう少し分かればいいんだけど。
「まぁ、もう少しこいつの能力試すとするか...「あの~クロト君、扉を開けてもいいかい?」マイケルさん?!何で?って服とか部屋に持って行かせるって言ってたな...少し待って下さい」
「はい、分かりました」
ふぅ~、危ない危ない。こんな、剣とか盾なんて持ってたら、不味い事態になり兼ねない。
「さてと、どうすればいいんだ?創れの逆...いや、元に戻れ?...違う。歯車で出来た剣と盾、歯車は時と共に動き続けている...歯車よ止まれ」
そう言うと歯車は、動きを止めバラバラになり消えていった。
「歯車よ止まれ、か...あ、マイケルさん、もう大丈夫です」
俺は、ポケットに時計を戻しながら言う。
「分かりました、失礼します」
あ、やば。ハクアの事忘れてた。気付いた時には既にマイケルさんが扉を開けて入って来ていた。
「クロト君、ベッドの上に着替えなど置いておくよ。また、用事があればボタンを押して呼んでね」
と言って、マイケルさんは部屋から去っていく。
ハクアは、いつの間にか時計の中に戻っていたようだ。
「良かった~、と、よし着替えるか...ってあれ?この服、ハクアが用意してくれた服に似てる。しかも下着も。そういえば、今の俺の服って、ハクアが用意してくれた高級そうな奴じゃなかったっけ?」
そう思い自分の服を見てみる。
「これは酷いなぁ。所々、穴が開いてて、ゴブリンの血が付いて固まって汚い黒になってんじゃねぇかよ。さっさと着替えよう」
と、またもや執事服(?)を着た俺は思った。
「脱いだ服ってどうするんだよ、そういえば、これってハクアが魔力で創ったものだから普通に片づけられないかも」
(クロトの言う通り、その服は通常の方法では片付けられないのでタチバナ・ハヤトに頼んで下さい)
「うわっ、ハクア!ビックリした。ってか、何で義父さんに?」
(多分、あの人は私の存在をご存じだと思いますので)
「はぁ?!マジかよ?!...あぁそうか。義父さんは神級精霊の契約者だったな。何となく納得出来る。じゃあ、頼んでみるか」
(それがいいと思います、それと、マイケルさんは着替えた服を入れる袋も用意してくれたようですよ)
「本当だ、ちゃんと見てなかった。ありがとう、マイケルさん」
服は畳んで袋に入れた。下着も、ハクアは創ってなかったから着れて良かった。
「服の件も何となく決まったけど、今から何すっかな?時計の性能を試すのも、何時マイケルさんが来るとも限らないしな。時計と言えば、今何時だ?」
ポケットから時計を取り出す。
「外の明るさを見て...午後、の三時三十二分か...疲れたし、少し寝るか。ハクア、誰か来たりしたら起こして貰ってもいいか?」
(いいですよ。私と会ってから色々な事がありましたからね)
「ありがと、よろしく」
と言って、俺はベッドに横になった。すると直ぐに、俺の意識は闇に沈んでいった。
(...と、...ロト、クロト!)
「わっ!ってハクアか。すまん、誰か来たのか?」
(えぇ。マイケルさんが)
「クロト君?入ってもいいかい?」
本当だ扉の向こうからマイケルさんの声がする。
「ありがとよ、ハクア。マイケルさん、大丈夫です」
俺はベッドから降りながらそう言う。マイケルさんは夕食と思われるものをお盆に載せて入ってくる。ちなみにマイケルさんの服装は、会った時からそうだが軽装で、腰に剣を携えているだけだ。
「あれ?クロト君、寝ていたのかい」
「はい。ちょっと疲れちゃいまして」
「そうですか、まぁ色々な事があったようですからね。あと、夕食を用意したのですがどうする?」
「あ、いただきます」
「分かった。御盆ごと机の上に置いておくよ。食べ終わったら、ボタンを押して僕を呼んでね。食器とかを回収に来るから。後、その時一緒にお風呂について説明するよ」
「分かりました、マイケルさん」
「うん。それじゃあ、また」
「はい、また後で」
俺に笑顔を見せて、マイケルさんは部屋を出て行った。
「さて、夕食でも食うか。何だろう?白い粒の集合体と茶色い液体と何か水分っぽいのはあるのにしぼんだ野菜?ま、まぁ、食べてみるか、って何だこの棒二本」
よく分らなかったが、何となくで使った。棒二本は片手で持って、食べ物を挟んで口まで運ぶ道具だと思って。
「あ、その前に、いただきます」
俺は手を合わせて、そう言った。今までしなかったその行為を当たり前の様に。俺は不思議に思ったが、悪い感じはしなかったので深く考える事はしなかった。
それから、数分後。食べ終わった俺はこう思った。
「美味しかった。美味しかったけど、夜食べるものじゃないと思う」
さてと、食べ終わったからボタンを押すか。
ぽちっとな...コンコン
「クロト君、入ってもいいかな?」
「早っ?!だ、大丈夫です」
「失礼します。おや、綺麗に全部食べてるね」
「はい。とても美味しかったので」
「それは良かった。じゃあ、食器を片付けさせて貰うね。お風呂に入りたい時は、またそのボタンを押してね」
て、手際がいい!
「あの~、お風呂は今からじゃダメなんですか?」
「いや、大丈夫だけど...少し待っててね」
そう言ってマイケルさんはお盆を持って、何処かへ走っていく。
二、三分経って、マイケルさんが部屋に戻って来る。扉は開けっ放しだから直ぐに分かった。
「クロト君、ごめん。少し遅くなっちゃって」
「大丈夫です。寧ろ、早いと思ってます」
「はは、そうかい。それじゃあ、浴場まで案内するから付いて来て」
俺は言われた通りにする。
「そういえば、あのボタンってどんな力があるんですか?」
歩いている時暇だから、気になったことをマイケルさんに聞いてみる。
「詳しい所は知らないんだけど、指定した人を転移させる力があるらしいよ。僕も、君の部屋の前に転移したし」
「なるほど、だからあんなに早かったんだ」
「おっと、もう着くよ。流石に此処まではそんなに時間は掛からないからね」
「こんなに広くて、不便じゃないですか?」
「いやそれが、ハヤトさんとかは屋敷の中を自由に移動出来る道具を持っているらしいんだ」
「マジかよ!そりゃあ、便利だ」
「そうだね。...おっと此処だ。よし、じゃあクロト君お風呂に入ってきな。僕は扉の前で待ってるから。一応本業門番だしね」
「分かりました。ありがとうございます」
そう言って俺は、浴場の扉を開き中に入る。
「広すぎだろ...」
脱衣所だけで既に、今の俺の部屋の三倍の広さだ。一体、何人で入る気だ?
俺はさっと服を脱ぎ、浴室を見に行った。
「いや、ナニコレ」
そこは、俺の部屋の十倍の広さ。
俺は現実逃避気味になり、体を洗ってお湯に浸かった。
「なんか寂しいもんだなぁ」
「そうですねぇ」
「へ?」
「へ?」
隣にハクアが居ました。なんかもう全裸にはなれた。
「お前、居るなら居るって言えよ。ビックリするだろ」
「ビックリさせたかったんですよ」
俺はハクアのこめかみをぐりぐりした。
「痛い!痛い!痛い!結構痛いですって!...でも謝りませんよ。私にご飯を食べさせなかった罰です」
「何も言わなかっただろ?」
「わざとですよ。気付いてくれるかなぁって」
「はぁ~、もう風呂出るか」
「そうですか、では私も」
ハクアはまた、時計の中に消えていく...って
「何で、時計がお湯の中に入ってるんだよ!...壊れてないよな」
(大丈夫そうですね)
「お前が持って来たんだろ!他人事みたいに言うな!後、次出てくるときちゃんと服着とけよ」
(てへっ。あと、わっかりました~)
大丈夫か?こいつ。
(クロトに言われたくないです、私は疲れで少し可笑しくなってるみたいです。少し休みます)
「ハクアがテンションマックスなのはちょっと嫌だな。ほんと、どうしちまったんだ?」
俺はそんな事を思いながら、風呂から出て脱衣所に置いてあるタオルを使って体を拭き服を着て外に出た。
「マイケルさん、タオルどうすればいいですか?」
「聞かれると思ったよ。脱衣所に物干し竿っていう竿があるから今度からはそこに掛けておいて、今回は僕が場所を教えるよ」
「分かりました」
そうしてタオルを干して、俺はマイケルさんと共に部屋に戻った。
「今日は、ありがとうございました」
「何かそう言われると、結構うれしいですね。でも、君の試練は明日だよ。多分、ハヤトさんの娘さんの一人と決闘することになるから」
「え?」
「だから今日は、しっかり疲れを取っておきな。」
「わ、分かりました。それじゃぁ、おやすみなさい」
「はい、おやすみ」
そう言葉を交わし、マイケルさんは何処かへ去っていった。
「ふぅ...明日も大変そうだ。早く寝るか...」
そして俺は、さっと眠りに就いた。
結構、文字数長くできた!
次回はバトル回!頑張って書くぞ!