十二話 橘 隼人(中編)
何か長く出来ないんだよなぁ。
死ぬ、その言葉に俺は少し怯える。
「それじゃあさっきの奴らは...」
震える声で聴く。帰って来たのはあまり聞きたくない言葉。
「恐らく、死にましたね。ですが自業自得です。私の忠告も聞かずに行ってしまったのですから。私は
元々、最初に言った通り一つだけ忠告をしに来ただけですので」
確かにそうだ。聞かなかったのはあいつ等だ。だが...
「人の命はそう簡単に扱ってもいいものなのか?」
そう聞いてしまう。俺はさっきの奴らの死を受け入れられない様だ。
「人の命、ね...貴方達が行く世界の敵は、人間の所為で産まれてしまったものなの。だから私は、あまり人間が好きじゃない。だから...」
光の精霊の悲痛な表情。今の話が本当かどうかは分からない。けれど、俺が自分の居た世界の都合を相手に押し付けようとしているのは事実だ。俺は光の精霊の居る世界の事は何も知らない。
「光の精霊さん、それより私達が死なない方法を教えて頂戴。あるんでしょ?」
気の強そうな少女が詰め寄って言う。
「どうして君はそう気楽でいられるんだ?」
俺は心も体も疲れていた為、そんな事を言ってしまう。
「何よ!私だって気楽じゃないわよ!あいつ等が私達を虐めていた連中でも、突然死ねば驚くわよ!少し気が楽になったのが本音だけど...兎に角、私は生きたいの。だから...」
「すまない...君たちはあいつ等に虐められていたのか?」
「えぇ、そうよ。テンションが一際高かった、田中 太郎が中心となってね。貴方も聞いた事はあるんじゃない?見た事無いけど、貴方も私達と同じ学校でしょ?」
「え?」
確かに、俺も同じ制服を着ている。でもこれは...これは...
「これは、これは.....」
「ねぇ、大丈夫?顔が真っ青だけど...聞いてる?ねぇってば!」
少女の声が聞こえる。
誰の声?記憶を探る。
探れない記憶が無いどうして大切な記憶もあった筈なのにどうして、どうしてオモイダセナインダ。
おれは...僕は何も思い出せない。
「此処は?」
僕が居るのは綺麗な部屋のベッドの上、洋風でまるで城の様な造りの部屋だ。写真でしか見た事無いけど。
「僕は?」
僕の名前はハヤト。それ以外何も思い出せない。どうして?
「起きたのですか?勇者様」
勇者?それは誰の事だろう?そう思って声がした方を向く。
そこには、金髪の少女が赤い瞳で僕の方を見つめていた。とても美しい、上品な少女。彼女は僕の運命の人だ!と叫びたくなる程、見ただけでもそう思える程美しい。でも、僕にはそんな勇気もないし。
それより、勇者ってどんな人だろうなぁ。あんな可愛い人に慕ってもらえるなんて、どんな幸せ者何だろう。
先程あの人と目が合ってしまったから、勇者の顔を一目見たって良いだろう。
僕は起きて、幸せ者の顔を見る事にした。
しかし、僕の前には鏡があって自分の顔を見る事になった。
「良かった、貴方は生きていてくれて」
僕の真横には、先程の少女が居た。
「えっと、貴方が言っている勇者って誰の事ですか?」
「もちろん貴方の事ですが?」
「えぇぇええええええええええ!」
人生で一番驚いたかもしれない。
「すみません、突然大声を出してしまって」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
今、僕と女の子は廊下を歩いている。それだけでも嬉しい。隣から、少し漂ってくる女の子特有の香りが僕の鼻孔をくすぐる。
女の子は、とても豪華な服装で一国のお姫様と言われても不思議じゃない格好をしている。
それに比べて僕は制服のままだ。はっきり言って、女の子には服装からして釣り合わないどころか別の銀河系の星と地の差だ。
「それにしても、此処広いですね」
「そうですか?これでも狭い方だと思うんですが」
「これで狭い!?後、今更なんだけど此処、何処?」
「後で分かります。それよりお名前を聞いても宜しいでしょうか?勇者様」
「ハヤトといいます。というか僕が勇者なんて何かの間違いなんじゃないですか?力とかも全く無いし」
「その理由も後で話します」
「...」
「...」
「...」
「...あの~」
「な、何ですか?」
「私の名前は気にならないんですか」
「あ、す、すみません。緊張しちゃって。それで、貴方のお名前は?」
「ふふっ、面白い方ですね。私の名前は[マリーヌ・アドリステン]です」
「そうですか。いい名前ですね」
「えぇ」
「...僕達は何処へ向かっているんですか」
「王の間です」
「...」
大声で驚きたくなった。王だよ、偉い王様。いったいどんな人何だろう?
しかし、今日は色んな事があるなぁ。
勇者になったり、アドリステンさんと話したり、王と会うことになったり...今日はまだまだ色々なことが起きる気がする。
「そう言えば、何で僕は寝ていたんですか?」
「...それも後で話します」
僕は、アドリステンさんの顔が若干暗くなったのを見逃さなかった。
「田中太郎って、知ってますか」
「...どうしてですか?」
「実は僕、記憶を無くしているんです。知識はあるんですが、ベッドで起きる前の記憶が無いんですよ」
「っ!...そうなんですか」
アドリステンさんの顔はどんどん辛そうになっていく。
「大丈夫ですか?」
「すいません勇者様。大丈夫です。お優しいのですね」
「そんなのが、僕の唯一の取り柄なんで」
「そんな...謙遜なさらないで下さい」
謙遜なんてしてないつもりなんだけど...、そう言おうとした瞬間アドリステンさんが急に止まった。目の前には豪華な扉がある。も、もう少しでぶつかる所だった~。
「此処が、王の間です」
僕は、もう着いちゃったのと言いたかったが、中に聞こえると大変な事になりそうなのでやめた。
「扉、開けますよ」
「...はい」
アドリステンさんが重そうな扉を、ゆっくりと開けていく...そして、完全に開く。
中には、華美な服を着た人が数十人と、奥に座る不機嫌な顔を浮かべた老人が居た。
少し書き方や、文の構成を変えました。
ブックマーク数やレビュー数などが増えれば、今までの話も同じ様にしようと思います。




