十話 時属性
遅くなってすみません。しかも短い...
もっと頑張らないと
今週中に後一話出せるかなぁ...
俺は食事を終え少し食休みしていた。義父さん以外は何処かへいっていたので、今食堂に居るのは義父さんと俺とメイドさん達だ。初めてメイドさんを見た時は、いたんだ、と思った。
ぼーっとしていると義父さんから小さな透明な球を渡された。これは何かと聞いてみると
「それは、この家の中を自由に転移出来る特殊な球だ。使い方は、この球を持って行きたい場所の名前を言えばいい。部屋の場合は、扉の前にしか転移出来ないがな」
そう言えば昨日マイケルさんが言ってたな。『ハヤトさんとかは屋敷の中を自由に移動出来る道具を持っているらしいんだ』って。それがこれか。
「めっちゃ失くしそう」
直径2.5センチメートル位の小さな球だ。少し気を抜いただけで失くしそうっていうのは言い過ぎか。でも、結構危ないぞ。
「そうだろう」
義父さんもそう思ってるんかい!それならどうするんだよ...
「実はこれに自分の血を一滴垂らすと、持ち主として設定される。そして持ち主になると[来い]と言えば持ち主の右手に玉自体が転移してくる、というメリットが存在するんだが...実は、血液中の魔力を感知して転移するという仕組みなのだ」
「え?...それじゃあ俺はこの球の持ち主になれないってことか?」
「...あぁ、そういう事になる。だから、頑張って失くさないでくれ」
そう言って義父さんは何処かへ逃げて行った。
「ちょっと待てーい!」
くそ、逃げやがった。失くすなとか言われたって、直ぐに失くしそうだし、逃げたって何時か会うし何考えてんだ義父さんは...そうだ!
「義父さんの所へ、[転移]!」
俺は球を握って叫んだ。すると、周りの景色がどんどん変わっていく。その光景に軽い眩暈がしたが直ぐに景色の変化は無くなった。そして目の前には義父さんがいる。
「気分が悪そうだな。俺の所とかいう曖昧な場所に転移しようとするからだ。座標固定は転移の基本。まぁ、物凄く難しいんだがな」
「そんな事はどうでも良い。義父さん、何で逃げたんだよ」
「どうでも良くないと思うんだがなぁ...魔力が無いんだったら、有る奴に頼めばいいって話だ。その話をする為に全速力で自分の部屋に向かってたんだが、お前が転移して来る早さが予想を上回ったから部屋に着けなかった。ま、取り敢えず俺の部屋行くぞ」
自分の部屋に歩き始めている義父さんの話の内容に納得し、何も言わずに付いて行く。
そんな時間もたたずに義父さんの部屋に着いた。扉からして何か威厳を感じさせる造りだった。
「ここには防音の効果の魔法が掛けられているから、どんな大声を出しても外には聞こえない」
「それって普通なのか?」
「まぁ、貴族の家なら普通だろうな。部屋の種類は違うだろうが...」
「ふーん。よく分からん」
そんな会話をしながら部屋に入った。
中はとてもシンプルで、本棚幾つかとでかい机しかなかった。
「さてとクロト、俺にハクアさんを紹介してくれないか?」
「やだ」
「何で?!」
「言い方が何か...」
「それを言われたら...まぁ、下心みたいなのは無いから会わせてくれ」
真剣な顔つきになった義父さんに気圧され、「分かった、分かった」と言って、ハクアに出て来るよう声を掛けた。
すると右ポケットから光の粒子が出て、何時も通りハクアになった。服はちゃんと着ている。
「初めまして、タチバナ・ハヤト。私は時の神級精霊ハクアです。知っているとは思いますが、クロトの間接的契約精霊です。どうぞよろしくお願い致します」
そう言ってハクアはお辞儀をする。
「こちらこそ初めまして。俺はクロトの義理の父、タチバナ・ハヤトだ。こちらこそよろしく」
義父さんも同じようにお辞儀をした。
ハクアの身長は俺より少し低い位、義父さんの身長は俺の1.5倍位な為、シュールな光景になっている。
「早速だが、ハクアさん。事情は理解していると思うが、クロトが持っている球の持ち主になってくれないか?」
「はい、いいですよ。クロト、球を出して」
俺は握っていた球をハクアに渡す。
「いいけど、お前って血出るのか?」
「私の魔力を覚えさせればいいだけです。人間や動物と違って、魔力が枯渇したら私達精霊は死にますからね。何時でも必ず体に魔力がありますからね」
と言って、ハクアは球に魔力を少し流した。魔力が流れるのって何か綺麗だな。
「はい、これで契約です...クロト、どうしました?そんな私の手をぼーっと見つめて」
「い、いや、魔力が流れるのって綺麗だなと思ってな」
唐突に聞かれ少し戸惑ってしまった。あれ?義父さんが変な顔をしている。
「クロト、お前魔力の流れなんて見れる訳無いだろ...って、何だその琥珀色の目は!」
「何だって、最初からこうだっただろ?」
「いや、俺が見た時は普通に黒色だったぞ?...もしかして、原因はお前が持っている魔道具か?」
「そう言えば、魔力を無意識に目に送ってしまうからじゃなかったかハクア」
「...」
ハクアが、何かを思い出したようで驚きの表情で俺を見ている。
「おーい、どうしたんだ。ハクア」
声を掛けるが何も反応しない。
「タチバナ・ハヤト、今すぐ眼帯かその代わりになるものを用意しなさい!」
突然ハクアが真剣な顔、義父さんにそう命令する。
「わ、分かった」
義父さんは戸惑いながらもハクアの命令に従うことにした様だ。
「クロト、今から言う事をよく聞いて下さい」
物凄い速さで顔を近付けて来たハクアに、先程の真剣な表情の義父さん以上に気圧され、俺は頷く事しか出来なかった。
「貴方は、時計の膨大な魔力で体が作り変えられたという所まではいいです。しかしその琥珀色の目は魔法属性によるものです。先天的か後天的かは分かりませんが、貴方の属性は私と同じ[時]です」
「それが何で大変なんだ?」
俺の質問にハクアではなく義父さんが答える。
「時属性っていうのは、この世界に3人しかいないと言われている程、珍しい属性だ。それを持っている事を他の人に知られたら、今の弱いお前では簡単に誘拐されて実験とかされるだろうな」
「...」
俺は、無能じゃなくなった代わりにとんでもないものを持ってしまった様だ。
今更だけど俺の人生、結構ハードだなぁ。
前々回、転移するとき場所の名前を言わなかったのは、転移の魔法を使ったからです。