九話 家族
短くなっちゃいました。すいません。
フラムさんに勝利した後、俺は皆と一緒に転移で食堂へ戻った。すると直ぐに、フラムさんが俺に迫ってきて色々聞いてくる。
「それで、貴方はどうして無能なんて呼ばれているの?」
「魔力が無いからだよ」
「...あの身体能力はどうやって身に付けたの?」
正直に答えるか少し悩んだが、家族になる人にはちゃんと話しておこうと思い
「...魔力が俺の体に高密度で入ってきて、体が作り変えられた」
と、答えた。
「高密度な魔力って何処から?」
「あ~、すまん。それはよく分からない」
先程の考えと真逆になるような答えだが、あまり魔道具の時計の事は話したくなかった。
中にある異常な量な魔力とかそこら辺を知られると、時計ではなく契約者の俺の方が解剖されたりし兼ねない。
身体能力の方もそんな可能性があるだろう。しかし俺の中に、身体能力は自分自身の力で手に入れたものでは無いという考えがある為、そっちの方は正直に答えた。
「そうなの?...まぁ、いいわ。お父様が勝手に貴方を連れて来た時は、何で無能なんかって思ってたけど、戦ってみて、お父様の言っていた意味がよく分かったわ。取り敢えず私は貴方を家族として認めるわ。よろしく」
満面の笑みでそう言われた俺はちょっと照れた。フラムさん可愛いな。
「あぁ。こちらこそよろしく!」
俺は手を前に出す。
フラムさん少し驚いていたようだが、やがて理解して同じ様に手を前に出して、握手を交わした。
「あ、それと私の事フラムって呼んでもいいわよ」
「分かったよ、フラム。それじゃあ、俺の事もクロトって呼んでくれないか?」
「分かったわ、クロト」
名前を呼び合ってみて分かったけど、結構ドキドキする。同じ位の年で可愛い女の子だからな~。ハクア?あいつは出会った時の出来事の方が衝撃的過ぎて...
「あらあら、二人共凄い仲良くなっているじゃない~」
「体と体で色々確認し合ったから、当たり前よ!」
「そうね。でも、その言い方は駄目よ」
「どうしてか分からないけど、分かったわ!」
いつの間にかマリーヌさんが近くに来ていて、フラムと話している。元気だな~。
「クロト君、私も貴方のお義母さんとして宜しくね。困ったことがあったら何時でも聞いて」
「えっと...分かりました、お義母さん」
「うふふ、普通に喋って大丈夫よ、家族なんだから」
「分かった、義母さん」
「はい、よくできました」
俺は義母さんに撫でられる。なんか恥ずかしい。あ!義父さんが羨ましそうな顔してる!目が怖えぇぇ!
「ハヤトさん?」
「は、はいなんでしょう!」
「怖がらせないで下さいね」
「わ、分かりました」
俺が義父さんの方を見て少し震えていたのに気が付いたのか、義母さんが義父さんを軽く(?)注意した。後に知ったが、尻に敷かれてるって言うらしい。お、俺もこうなるのかな?
「そういえば、貴方達はどうなの?クロト君を家族と認めてもいいんじゃない?」
義母さんは、義父さんのもう一人の妻と娘、セレナさんとルキナさんの方を向いてそう言った。
「私達は、クロト君を見た瞬間にもう認めている。貴方達みたいに脳筋じゃないから」
「うんうん」
セレナさんが無表情でそう言い、ルキナさんも同じ様な顔で相槌を打つ。
「という訳で、私からも宜しくクロト君。後、私もお義母さんって呼んでくれていいよ」
「義母さんが二人、ややこしい!」
本音を言ってしまったが、二人共怒らずに何となく納得した様な顔をしていた。
「私も宜しく、クロトお兄ちゃん。それと、フラムみたいに呼んでもいいよ」
いつの間にか俺の傍まで来ていたルキナが、身長の差から俺を少し見上げながらそんな事を言った。
「お兄ちゃん?!」
俺は真っ先にその言葉に反応した。
「うん。何となくだけど、そう呼びたい」
何となくって...まぁ、いいか。
「よし!俺からも宜しくルキナ」
「うん」
これで俺は、タチバナ家全員に認めて貰うことが出来た。
「そういえば、皆何で苗字にタチバナが入ってないんだ?」
俺がその疑問を言った途端、俺以外の全員が固まった。やべぇ、そんな聞いちゃいけない話だったのか?
「それはだなクロト、妻や娘達にタチバナって名前は合わなくない?と思った俺が皆に頼んだからだ...」
「は?」
俺は義父さんの言った理由に疑問を持ってしまった。それだけ?
「それで私達も、はっきり言ってそうね!、と簡単に受け入れたのよ」
マリーヌ義母さんがぶっちゃけちゃってる。
「クロトは、ハヤトと同じ様に[タチバナ・クロト]になるの?それとも[クロト・タチバナ]?...どっちも合ってる。あ、[クロト・ヘスレムン]もいい」
「セレナ!そこまで言って何で[クロト・アドリステン]がないのよ!」
「忘れてた」
「貴方は、もう!」
何か俺の苗字決めで喧嘩(?)が始まっちゃったよ。そういえば、セレナ義母さんが君付けで呼ばなくなった。正直、めっちゃ嬉しい。
「[タチバナ・クロト]。俺はこれが一番しっくりくるんだよな。この形がいいかな」
「そうなの?それならそれで決まりね」
「お兄ちゃんの名前だから、お兄ちゃん本人が決めた方がいい」
フラムとルキナが俺の意見に同意してくれる。
「そうね~、本人が言っているんだしね~」
「やはり、本人の意見が最優先」
義母さん達も納得している。
「よし、それじゃあ俺の名前は[タチバナ・クロト]だ!これからよろしくお願いします!」
「ようこそ、タチバナ家へ」
義父さんの言葉に釣られて他の皆もようこそ!と言ってくれた。
「さて、食事にしましょ」
「「「「「は~い」」」」」」
マリーヌ義母さんの声で皆が席に着く。
それから俺は、タチバナ家皆での最初の食事をした。俺が[いただきます]や箸の使い方を知っているのに驚かれたり、フラムにあ~んされたりと色々な事があったのだが、またの機会に話すとする。
「ようこそ、橘 黒人。俺の息子よ」
最後の発言は誰が言ったのかなぁ、分かるだろうけど。